仁田峠循環自動車道路

仁田峠循環自動車道路（にたとうげじゅんかんじどうしゃどうろ）は、長崎県雲仙市と南島原市にまたがる雲仙天草国立公園内に位置する、延長およそ8.2キロメートルの山岳道路です。この道路は「仁田峠循環道路」とも称され、雲仙普賢岳の山麓を巡りながら、変化に富んだ美しい自然景観と、随所からの雄大な眺望を提供しています。

歴史的な変遷

この道路は、もともと長崎県が管理運営する有料道路として供用が開始されました。最初の区間は1936年に、そして全線が開通したのは1956年のことです。特に1956年の全線開通時には、当時の日本道路公団が初めて管理・運営を手がけた道路としても知られています。有料道路として長らく利用されていましたが、2007年には自然公園法制定50周年を記念して期間限定で無料開放される機会がありました。そして、2009年 4月1日には長崎県から雲仙市に移管され、正式に「雲仙市道小浜仁田峠循環線」として無料開放され、現在に至ります。

道路の特徴と利用条件

仁田峠循環自動車道路の最大の特徴は、全国的にも珍しい全線にわたる左回りの一方通行であることです。これは、狭い道幅や急な勾配、そして多数の急カーブが連続するつづら折れの多い線形に対応し、安全性を確保するために導入されています。道路の通行時間には制限があり、例年4月から10月は午前8時から午後6時まで、11月から3月は午前8時から午後5時までとなっており、夜間は閉鎖されます。

無料開放後、通行料金はかかりませんが、道路の維持管理のために1台につき100円程度の任意による協力金の支払いが呼びかけられています。

かつては雲仙温泉街とを結ぶ定期バスが運行されていましたが、現在は一日3往復の乗合タクシーが利用可能です。

ルートと沿線の景観

この道路は、雲仙・普賢岳の南麓、雲仙市小浜町雲仙にある国道57号からの入口が起点となります。ここから登り始めると、道は徐々に標高を上げていき、視界が開ける地点や展望所が点在します。

起点から約5キロメートル進むと、雲仙の南斜面に出るため視界が大きく開け、眼下に島原湾の青い海と、その対岸に広がる熊本の市街地や遠く阿蘇山の姿を望むことができます。

さらに約1キロメートル進んだ場所にある「第二展望所」からは、より広範囲な眺望が得られます。島原市街地の町並みから、島原湾を経て有明海までが一望でき、遠く九州山地の九重連山まで見渡すことが可能です。また、すぐ間近には普賢岳の雄大な山容が迫ります。

そして、普賢岳の5合目にあたる標高1,080メートル地点に位置するのが「第一展望所」です。ここが道路の中間点にあたる仁田峠です。第一展望所からは、平成新山と普賢岳の山頂が間近に迫り、眼下には雲仙温泉街の街並みを見下ろすことができます。仁田峠は雲仙ロープウェイの乗り場があり、妙見岳方面へのアクセス拠点ともなっています。春の5月頃には、周辺にミヤマキリシマが咲き誇り、美しいピンク色の絨毯が広がります。

仁田峠を過ぎると、道路は下りとなり、谷筋を縫うように進んでいきます。終点は雲仙市小浜町雲仙にあり、国道389号と合流します。起点の国道57号交点と終点の国道389号交点は、およそ3キロメートル離れた位置関係にあります。

通行上の注意点

一方通行ではありますが、道路の線形が厳しいため、走行には十分な注意が必要です。特に夏場は濃霧が発生しやすく、冬場は路面凍結や積雪により通行止めとなることがあります。年間を通じて閉鎖される期間はありませんが、これらの気象条件による通行規制が発生する可能性があるため、事前に道路状況を確認することが推奨されます。

また、春のミヤマキリシマの開花期や秋の紅葉シーズンといった観光最盛期には、多くの観光客が訪れるため、駐車場不足による激しい渋滞が発生しがちです。このため、混雑時には通行規制やパークアンドライドシステムの導入が検討されるなど、対策が図られることがあります。

仁田峠循環自動車道路は、その厳しい線形とは裏腹に、雲仙の豊かな自然と絶景を存分に満喫できる魅力的なドライブルートです。訪れる時期によって異なる表情を見せる景観は、多くの人々を惹きつけています。

通過自治体

長崎県雲仙市、南島原市を通過します。

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