仁礼景範

仁礼景範：日本の海軍近代化に貢献した薩摩藩出身の軍人

仁礼景範（にれ かげのり、1831年4月6日 - 1900年11月22日）は、明治時代の海軍軍人です。薩摩藩士の子として生まれ、幼名は源之丞、平助でした。最終階級は海軍中将に上り詰め、従二位勲一等子爵に叙せられました。

波乱に満ちた前半生

仁礼は、1831年、薩摩藩士の家に生まれました。若き日には朔平門外の変に巻き込まれ、田中新兵衛と共に逮捕されるも、後に釈放されています。薩英戦争にも参加し、その後、1867年には薩摩藩からアメリカへ留学するなど、若くして様々な経験を積みました。

海軍での活躍と要職歴任

1872年、海軍少佐として海軍へ入ります。その後、海軍兵学校校長、東海鎮守府長官、中艦隊司令官、軍事部長など要職を歴任し、1885年には海軍中将に昇進しました。

参謀本部次長、海軍参謀本部長、横須賀鎮守府司令長官、海軍大学校長など、海軍の中枢を担う要職を歴任し、日本の海軍力強化に貢献しました。特に1892年には第2次伊藤内閣において海軍大臣に就任し、海軍の近代化、整備に尽力しました。

海軍軍令部の設置とその後

海軍大臣在任中には、陸軍の参謀本部から海軍軍令権の独立を目指し尽力しました。1893年には軍令部（後の軍令部総長）が設置されるも、陸軍の反対により頓挫という結果に終わりました。

また、民党や文官からの海軍改革への不熱心といった批判を受け、辞意を表明します。伊藤博文首相は、海軍改革の推進と野党との連携強化を目的に、仁礼の辞任を受け入れました。その後、予備役編入となり、1896年には後備役となります。

晩年と功績

仁礼は1900年11月22日に70歳で亡くなりました。青山霊園に眠る彼は、海軍大臣や軍令部長など要職を歴任し、日本の海軍近代化に大きく貢献した人物として歴史に名を残しています。

逸話：西郷隆盛像の犬のモデル

仁礼の娘、春子の証言によると、仁礼が飼っていた犬が、上野公園にある西郷隆盛像の犬のモデルになったと言われています。像の建設にあたり、モデルとなる薩摩犬がなかなか見つからなかったところ、春子の愛犬が薩摩犬であったことが判明し、急遽モデルとして選ばれたという興味深いエピソードが残されています。

家族

仁礼景範は、長男景一（海軍少佐、日露戦争で戦死）、娘春子（総理大臣斎藤実夫人）、次男景助（子爵、北海道で農場経営）、三男景雄（昆虫学者）といった子供たちに恵まれました。孫には陸軍少将の高田利貞、海軍少将の高田利種などがいます。

まとめ

仁礼景範は、薩摩藩出身の海軍軍人として、明治時代の日本の海軍近代化に多大な貢献をしました。数々の要職を歴任し、その功績は高く評価されています。また、愛犬が西郷隆盛像のモデルになったという逸話など、彼の人物像を多角的に知る上でも貴重な資料となっています。彼の生涯は、激動の明治時代の日本における海軍発展の歴史を語る上で、欠かせない重要なピースと言えるでしょう。

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