今井正アワー

今井正アワー：1966年のテレビドラマ傑作選

1966年、NETテレビ（現・テレビ朝日）で放送された『今井正アワー』は、今井正監督が全編を演出した話題のテレビドラマシリーズです。20話から成るこの作品は、「愛情」をテーマに、全5作で構成されています。各作品は3～5話からなり、それぞれの物語が視聴者の心に深く刻まれました。

放送は、まず毎週土曜日の22時から23時まで、第1作『初夜』から第4作『ガンかて笑って死ねるんや』が放送されました。しかし、第4作終了後、土曜洋画劇場の新設に伴い番組は一時中断。約2ヶ月後の1966年11月27日、毎週日曜日の22時から23時の時間帯に移動し、第5作『海の心の通うとき』が放送されました。

5つの物語: それぞれの作品は異なる設定と登場人物で構成され、多様な人間のドラマが描かれています。

第1作『初夜』: 大学の文学部生と、小料理屋の仲居の女性との出会いと恋を描いた物語。三浦哲郎の小説が原作です。津川雅彦、磯村みどりらが出演し、繊細な人間関係が丁寧に描かれています。
第2作『下町の青春』: 下町の工員を中心に、強制寄付への抵抗と、権力との戦いを描いた物語。坂本九、大川栄子らが熱演する群像劇は、社会問題にも鋭く切り込みます。
第3作『雨のひまわり』: 数学者を主人公に、娘たちの葛藤と家族の絆を描いた人間ドラマ。中村鴈治郎、市原悦子、中村玉緒という豪華キャストが、静かに深い感動を与えます。
第4作『ガンかて笑って死ねるんや』: ガン患者とその家族の闘病生活を描いた、感動作。中村歌子の手記を原作に、松村達雄と丹阿弥谷津子が夫婦役で主演。
* 第5作『海の心の通うとき』: 貨物船と漁船の衝突事故を巡る、人間ドラマ。山形勲が船長を演じ、事故の真相究明と、正義と権力の闘いが描かれています。

スタッフと制作

プロデューサーは本田延三郎氏と吉津正氏。NETと東映テレビプロの共同制作により、モノクロの16mmフィルムで制作されました。各作品には、一流の脚本家、作曲家、そして俳優陣が参加し、作品クオリティを高めました。音楽は中村八大氏や渡辺宙明氏など、著名な作曲家が担当。主題歌は坂本九氏が歌った「下町の青春」が人気を博しました。

今井正監督の演出

今井正監督は、その独特の演出で知られており、本作品においても、繊細な心理描写と人間ドラマを巧みに表現しました。その演出スタイルは、多くの視聴者に深い感銘を与え、今もなお語り継がれています。

『今井正アワー』は、単なるテレビドラマを超えた、人間の深層に触れる名作シリーズです。5つの異なる物語を通して、普遍的なテーマである「愛情」を多角的に表現した、今井正監督の真骨頂と言える作品と言えるでしょう。

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