今帰仁御殿

今帰仁家：琉球王族から華族へ

今帰仁家（なきじんけ）は、琉球王国の歴史と深く関わる由緒ある家系です。第二尚氏分家の流れをくむ琉球王族であり、華族としての歴史も持ちます。

系譜と歴史

今帰仁家の起源は、尚育王の三男である今帰仁王子朝敷に遡ります。朝敷は、当初具志川王子と呼ばれていましたが、後に今帰仁王子と改められました。これは、彼が今帰仁間切（現在の今帰仁村）を領地として治めることになったためです。琉球王国時代には、この地で按司地頭として重要な役割を担っていました。

琉球処分という激動の時代においては、朝敷が兄に代わって、琉球処分官である松田道之と交渉にあたるなど、重要な役割を果たしました。

明治12年（1879年）の琉球藩の廃藩に伴い、今帰仁家は同年に華族に列せられました。この際に、今帰仁朝敷と改称しています。しかし、明治17年（1884年）の華族令施行による五爵制においては、当初は爵位が与えられず、無爵華族となっていました。

この状況に対し、柳原前光は、今帰仁家をはじめとする無爵華族が、貴族院議員にも衆議院議員にもなれない不当な立場にあると指摘し、爵位授与を強く訴えました。その結果、明治23年（1890年）3月27日、朝敷に男爵位が贈られました。

その後、今帰仁家は男爵家として続くことになります。孫にあたる朝英の代には、沖縄県首里市大中町に邸宅を構えていました。

今帰仁家の系譜は以下の通りです。

一世：今帰仁王子朝敷 → 今帰仁朝敷
二世：湧川按司朝和 → 今帰仁朝和
三世：今帰仁朝英
四世：今帰仁朝秀

今帰仁家の意義

今帰仁家は、琉球王国の終焉から近代日本への移行期において、王族から華族への転身を遂げた家系として、歴史的意義を持ちます。また、彼らの華族としての立場、そしてその変遷は、当時の政治状況や身分制度を知る上で貴重な事例となっています。特に、爵位授与をめぐる過程は、華族制度の複雑さと、その制度の中で生じた様々な問題を浮き彫りにしています。

今帰仁家の歴史を研究することで、琉球王国の終焉と近代日本の形成過程、そして華族制度の現実をより深く理解できるでしょう。彼らの生き様は、激動の時代を生き抜いた琉球王族の末裔の姿を私たちに示しています。

参考文献

沖縄県氏姓家系大辞典 編纂委員会『沖縄県氏姓家系大辞典』角川書店、1992年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社、2006年
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター、1990年
喜舎場一隆『琉球・尚氏のすべて』新人物往来社、2000年
比嘉朝進『士族門中家譜』球陽出版、2005年
宮里朝光（監修）、那覇出版社（編集）『沖縄門中大事典』那覇出版社、1998年
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年
森岡浩『日本名門・名家大辞典』東京堂出版、2012年

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