今橋映子

今橋映子：比較文化と芸術の探求者

今橋映子氏（1961年生まれ）は、日本の比較文学比較文化、比較芸術研究において、その卓越した業績で知られる東京大学大学院総合文化研究科教授です。

東京都港区出身の今橋氏は、学習院女子高等科を経て、学習院大学文学部フランス文学科を卒業。その後、会社勤務を経て、東京大学大学院比較文学比較文化専攻修士課程に進学します。1989年から1990年には、石坂財団奨学生としてパリ第4大学大学院博士課程に留学し、DEAを取得。1992年には東京大学にて博士（学術）の学位を取得しています。

今橋氏の研究は多岐に渡り、特に「日本人のパリ」「パリ神話と外国人芸術家」「写真文化論」「日本近代美術批評と美術思想史」といったテーマに焦点を当てています。パリという都市を舞台に、多様な芸術的表現や文化交流を精緻に分析。写真研究にも造詣が深く、視覚文化の新たな側面を明らかにする貢献をしています。

その研究の成果は、数々の受賞歴に裏付けられています。1994年には処女作『異都憧憬　日本人のパリ』でサントリー学芸賞を受賞。同作品は、日本人が抱いてきたパリへの憧憬と現実を鮮やかに描き出し、高い評価を得ました。さらに、2004年には写真協会賞学芸賞を受賞するなど、写真研究分野においても大きな功績を残しています。

2021年には、『近代日本の美術思想—美術批評家・岩村透とその時代』を上・下巻で刊行。美術批評家・岩村透の生涯と業績を詳細に分析することで、近代日本の美術思想を多角的に解明し、日本の美術史研究に新たな視座を与えました。この作品は、単なる人物伝にとどまらず、当時の社会状況や文化風潮を丁寧に描き出し、日本の近代美術を理解する上で極めて重要な一冊として高い評価を得ています。

学術研究活動に加え、今橋氏は筑波大学文芸・言語学系専任講師、東京大学大学院総合文化研究科助教授、准教授を経て、2010年8月より同教授に就任。教育活動にも積極的に携わり、多くの学生を育成してきました。

今橋氏の主要な著作には、『異都憧憬―日本人のパリ』『パリ・貧困と街路の詩学—1930年代外国人芸術家たち』『〈パリ写真〉の世紀』『ブラッサイ パリの越境者』『フォト・リテラシー—報道写真と読む倫理』などがあります。これらの著作は、いずれも学術的な厳密さと読みやすさを兼ね備え、多くの読者から支持されています。編著として『金子光晴 旅の形象—アジア・ヨーロッパ放浪の画集』などもあり、幅広い分野で活躍しています。

比較文学、比較文化、比較芸術という専門性を活かし、写真研究、美術史研究、そして文化人類学的な視点を統合した独自の研究スタイルは、今橋氏の大きな特徴と言えるでしょう。その多角的な視点と緻密な分析は、現代の文化研究に大きな影響を与え続けています。妹は日本美術史を専門とする今橋理子氏（学習院女子大学教授）であり、学術的な一家として知られています。

今橋映子氏の今後の研究活動にも、大きな期待が寄せられています。

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