今橋理子

今橋理子：近世絵画研究の第一人者

今橋理子氏は1964年生まれの美術史学者です。学習院大学で哲学博士号を取得後、日本学術振興会特別研究員や東海大学専任講師などを経て、現在は学習院女子大学教授として活躍されています。比較文学者である今橋映子氏は姉にあたります。

氏の研究は、主に近世日本絵画、とりわけ人物画以外の分野に焦点を当てています。初期の研究では秋田蘭画に着目し、その後の研究活動へと繋がる重要な基盤を築きました。特に、花鳥画や動物画といったジャンルにおいて、詳細な実証研究を積み重ね、近世日本の美術文化理解に大きく貢献しています。

1995年には博士論文を元に執筆された『江戸の花鳥画 博物学をめぐる文化とその表象』で、サントリー学芸賞と芸術選奨新人賞を受賞。この快挙は、姉である今橋映子氏の受賞に続くものでした。その後も、『江戸絵画と文学 <描写>と<ことば>の江戸文化史』、『江戸の動物画 近世美術と文化の考古学』など、数々の著作を発表し、日本の近世美術史研究において重要な役割を担ってきました。

2009年には『秋田蘭画の近代―小田野直武「不忍池図」を読む』で和辻哲郎文化賞を受賞。この著書は、秋田蘭画における代表的な作品の一つである小田野直武の「不忍池図」を詳細に分析し、秋田蘭画が近代日本の美術に及ぼした影響を深く考察したものです。同書は、秋田蘭画研究における重要な成果として高く評価されています。

近年の著作としては、『兎とかたちの日本文化』や『桜狂の譜　江戸の桜画世界』などがあります。これらの著作を通して、今橋氏は多様な視点から近世日本の美術文化を探求し続けています。

今橋理子氏の研究は、単なる絵画の分析にとどまりません。絵画作品を当時の社会や文化、博物学といった周辺領域と関連付けることで、近世日本の美術を多角的に理解することを目指しています。その研究手法は、後の美術史研究者たちに大きな影響を与え、日本の近世美術研究に新たな視座を与えたと言えるでしょう。

数々の受賞歴と充実した著作リストは、今橋理子氏が日本の美術史研究において、揺るぎない地位を築き上げていることを証明しています。その研究は、これからも日本の美術史研究に新たな光を当て続けることでしょう。

主な著書

『江戸の花鳥画 博物学をめぐる文化とその表象』（スカイドア、1995／講談社学術文庫、2017）
『江戸絵画と文学 <描写>と<ことば>の江戸文化史』（東京大学出版会、1999）
『江戸の動物画 近世美術と文化の考古学』（東京大学出版会、2004）
『秋田蘭画の近代―小田野直武「不忍池図」を読む』（東京大学出版会、2009）
『兎とかたちの日本文化』（東京大学出版会、2013）
『桜狂の譜　江戸の桜画世界』（青幻舎、2019）

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