仕奉

仕奉（しぶ）の概念

「仕奉」とは「仕える」と「奉る」を組み合わせた言葉で、目上の人に対する謙譲の意を込めて使用されます。日本の歴史的文脈においては、特に古代におけるヤマト王権や大和大王（天皇）に対して、臣従の意思を示す行為を指します。この「仕奉」という関係性によって、主従や社会的なつながりが形成されるのです。

古代社会における仕奉

古代の日本において、氏族（集団）とそのメンバーである氏人が大王や王権に対して、その忠誠心を示すためには二つの手段がありました。一つは物品の「たてまつり」、つまり貢納と呼ばれる物質的な表現です。もう一つは自らの身体で「つかえまつる」、即ち人的な表現である仕奉です。この二つが合わさることで、政事や祭りごとの基盤が形成されていたのです。

文献と出土品の証拠

文献史料としては、『日本書紀』や『続日本紀』に「つかえまつる（仕え奉る）」という表現が散見され、これが当時の仕奉の実態を示しています。また、出土史料としては、稲荷山古墳から発見された金錯銘鉄剣に見られる「杖刀人首として奉事」や、江田船山古墳の銀象嵌銘大刀に刻まれた「典曹人として奉事」といった具体例があります。

人制の概念

仕奉を通じて構築された社会的な枠組みは、「人制」と称されています。この人制は、職能集団としての組織と、それぞれが果たすべき職務を通じて、王権や大王に奉仕する体制を意味しています。つまり、特定の職務を持つ集団が形成され、彼らが一つの目的に向かって協力することで、国家の基盤が築かれていったのです。

律令制と仕奉の継続

律令制の導入後も、朝廷や天皇に対する仕奉の意識は生き続け、官人たちはそれぞれの官職に課せられた公務を遂行することによって仕奉の行為を行っていました。百姓たちもまた、戸籍に登録されていることにより、労働力（庸・雑徭）という形での仕奉を行い、税金（租・調）という形での貢納を通じてコミュニティを支えました。

まとめ

「仕奉」という概念は、ただの忠誠心ではなく、当時の日本社会における複雑な人間関係や、国家機構の発達を象徴する重要な要素となっています。目上の人に仕える行為は、謙虚でありつつも、社会を成り立たせるためには不可欠なものでありました。その価値観は現代にも受け継がれています。

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