仙台陸軍飛行学校

仙台陸軍飛行学校は、太平洋戦争中に存在した日本陸軍の軍学校です。主に航空関係の予備役将校を養成する甲種幹部候補生の教育と、航空関係の現役将校となる学生への地上勤務教育を実施しました。その前身である水戸陸軍飛行学校の設立から、仙台陸軍飛行学校としての終焉まで、その変遷を詳細に解説します。

設立の経緯

1937年、軍備拡張計画の一環として、航空兵力の増強が決定されました。これにより、航空関係の教育機関も強化され、東京陸軍航空学校を始めとする新たな学校が設立されました。東京陸軍航空学校は、少年飛行兵を大量に養成するための基礎教育機関でした。

基礎教育を終えた生徒は、操縦、技術、通信などの専門分野に分かれ、それぞれの学校で専門教育を受けました。操縦と技術の専門学校は既に存在していましたが、通信と戦技に関しては既存の学校が兼任していたため、生徒数の増加に対応するため、「陸軍航空戦技学校」（仮称）の新設が計画されました。ここで言う戦技とは、旋回機関銃の射撃や機上通信といった、航空機に特化した戦闘技術を指します。この新設校は、将校学生、下士官学生、幹部候補生、東京陸軍航空学校出身の生徒を合わせて、年間約500名を教育する計画で、水戸陸軍飛行学校として設立されました。

水戸陸軍飛行学校

1938年7月、水戸陸軍飛行学校が設立されました。学校令では、航空関係の通信および火器に関する学術を修得させ、通信や戦技に従事する下士官や幹部候補生を教育すると定められました。また、航空に関する地上勤務に従事する幹部候補生の教育も担いました。

それまで下志津陸軍飛行学校が担当していた航空通信教育、明野陸軍飛行学校が担当していた火器取扱教育は、水戸陸軍飛行学校の設置によって移管されました。学校の編成は、校長の下に幹事、本部、教育部、研究部、教育隊、材料廠、学生で構成され、教育部が学生の教育を、教育隊が幹部候補生を含む生徒、下士官学生、下士官候補生の教育を担当しました。

当初、水戸陸軍飛行学校は下志津陸軍飛行学校の構内に設置されましたが、1939年3月には茨城県那珂郡に移転しました。

1940年4月には、少年航空兵が正式に少年飛行兵と命名され、水戸陸軍飛行学校の被教育者の区分も変更されました。通信に従事する少年飛行兵となる生徒、および各隊から派遣された幹部候補生が教育を受けるようになりました。同年7月末には、学校令が改正され、通信に関する教育と研究が陸軍航空通信学校に移管されました。これにより、水戸陸軍飛行学校は火器に関する教育を専門とする学校へと移行しました。

1943年4月には、水戸陸軍飛行学校は予備役将校を養成する学校としての性格を強め、教育の中心は操縦候補生と甲種幹部候補生になりました。

仙台陸軍飛行学校

1943年8月、水戸陸軍飛行学校の施設を利用して明野陸軍飛行学校分校が設置されたため、水戸陸軍飛行学校は同年9月に宮城県名取郡に移転し、仙台陸軍飛行学校と改称しました。1944年5月には、学校令が改正され、予備役将校だけでなく、現役将校となる学生の教育も担当することになりました。これにより、仙台陸軍飛行学校は陸軍予備士官学校に近い性格を持つ学校となりました。

現役兵科将校の教育とは、陸軍航空士官学校で一括して行っていた少尉候補者の教育と、予備役の特別志願将校を現役に転換させるための教育を指します。少尉候補者の教育は、各陸軍飛行学校や部隊に分担され、仙台陸軍飛行学校もその一つとなりました。

この改正に伴い、学校に学生隊が設置され、学校の編成は校長、幹事、本部、教育部、生徒隊、学生隊、材料廠となりました。生徒は校内の生徒隊で、学生は校外で生活することを原則としましたが、教育の充実のため学生も校内で生活することが可能になりました。

1945年4月には、陸軍航空総監部が閉鎖され、仙台陸軍飛行学校は陸軍航空本部の管轄となりました。そして、同年8月の終戦に伴い、仙台陸軍飛行学校は閉校しました。

学校の終焉とその後

仙台陸軍飛行学校の跡地は、アメリカ軍に接収された後、1956年に返還され、防衛庁と運輸省が共同使用する飛行場となりました。1964年には第二種空港に指定され、現在は仙台空港として利用されています。

学校の敷地内にあった航空神社は、進駐軍に接収された後、近隣の下増田神社に合祀されました。

年譜

1938年7月 - 下志津陸軍飛行学校内に水戸陸軍飛行学校を設置
1939年3月 - 水戸陸軍飛行学校を茨城県那珂郡へ移転
1940年8月 - 航空通信の教育と研究を陸軍航空通信学校へ移管
1943年9月 - 水戸陸軍飛行学校を宮城県名取郡に移転
1943年10月 - 水戸陸軍飛行学校を仙台陸軍飛行学校へ改称
1945年8月 - 終戦により閉校

歴代校長

水戸陸軍飛行学校

藤田朋少将：1938年12月10日 - 1940年8月1日
中薗盛孝少将：1940年8月1日 - 1941年10月15日
山中繁茂少将：1941年10月15日 - 1943年1月3日
広田豊少将：1943年2月25日 - 10月1日

仙台陸軍飛行学校

広田豊少将：1943年10月1日 - 1945年2月20日
児玉久蔵少将：1945年2月20日 -

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』初版、東京大学出版会、1991年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧第一巻』芙蓉書房出版、1993年。
防衛研修所戦史室『陸軍航空の軍備と運用（2）昭和十七年前期まで』朝雲新聞社〈戦史叢書〉、1974年。
防衛庁防衛研修所戦史室『陸軍航空の軍備と運用（3）大東亜戦争終戦まで』朝雲新聞社〈戦史叢書〉、1976年。
陸軍航空士官学校史刊行会編『陸軍航空士官学校』1996年。
大久保弘一『陸軍読本』日本評論社、1938年。（国立国会図書館デジタル化資料）
百瀬一『天空翔破東京陸軍航空学校志望者の為に』東京陸軍航空学校将校集会所、1940年。（国立国会図書館デジタル化資料）

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