仙石貢

仙石貢（せんごく みつぎ/せんごく みつぐ）

日本の鉄道官僚、実業家、政治家。
安政4年6月2日（1857年7[[月22日]]）に高知県高知市で生まれ、1931年（昭和6年）10[[月30日]]に74歳で亡くなりました。工学博士の学位を持ち、没後には勲一等旭日大綬章が追贈されています。

生い立ちと学歴

1872年（明治5年）に高知藩病院附属吸江学校に入学し、英語を学びました。その後、東京大学理学部土木工学科に進学し、1878年（明治11年）7月に卒業。同年9月には東京府土木掛に任官し、技術者としてのキャリアをスタートさせました。

鉄道官僚としての活躍

1884年（明治17年）に工部省鉄道局に勤務し、日本鉄道や甲武鉄道の工事を担当。1891年（明治24年）には工学博士の学位を取得しました。1896年（明治29年）10月、逓信省鉄道技監を最後に退官し、その後は実業家として活躍します。

実業家、政治家としての活動

退官後は、筑豊鉄道社長、九州鉄道社長、南満洲鉄道設立委員、猪苗代水力電気社長などを歴任。1914年（大正3年）には鉄道院総裁に就任し、鉄道行政の中枢を担いました。1915年（大正4年）には衆議院議員として高知県から選出され、政界にも進出。1924年（大正13年）には加藤高明内閣、1926年（大正15年）には第1次若槻禮次郎内閣で鉄道大臣を務めました。また、1920年（大正9年）には土木学会第7代会長にも就任しています。1929年（昭和4年）には南満洲鉄道総裁に就任し、鉄道人としてのキャリアを全うしました。

主な事跡

浴衣の卒業式

東京大学の卒業式に、洗いざらしの浴衣で出席したという逸話があります。関係者からの苦情に対し、「天にも地にもこれ一枚しかない」と言い張り、物議を醸しました。

甲武鉄道（現：中央本線）の直線

甲武鉄道の工事担当者であった頃、中野 - 立川間の線路敷設に際し、反対運動に悩まされたとされます。しかし、仙石は地図上に直線を引き、現在の約25kmの直線ルートを決定したという逸話があります。ただし、この逸話には異説もあり、青木栄一氏は鉄道建設の常識から考えて不自然だと否定しています。

日本鉄道（現：東北本線）建設の猛烈監督

栗橋から宇都宮までの建設を担当した際、現場を徹底的に監督しました。早朝から夜遅くまで現場を巡回し、時には無断で家屋に穴を開けることもあったそうです。しかし、その仕事ぶりは工学士として初めて鉄道を建設したこともあり、合理的だと評判になりました。

碓氷峠のアプト式鉄道建設

碓氷峠を越える鉄道建設では、当初様々な案がありましたが、ドイツ留学中の仙石からの報告を受け、アプト式鉄道が採用されました。1891年（明治24年）に着工し、1893年（明治26年）に開通しました。

九州鉄道の改革

筑豊鉄道社長、九州鉄道社長として、鉄道経営の合理化に尽力しました。会社合併を推進し、サービスの改善や設備の改良に取り組みました。

鉄道広軌化

鉄道広軌化論者であり、鉄道院総裁時代には広軌化を提唱しました。

猪苗代水力電気

猪苗代水力電気の発足に尽力し、社長に就任。猪苗代湖の湖水を利用した発電事業を推進し、当時最先端の高圧送電技術により、関東地方への電力供給を実現しました。

電車運転不調の謝罪広告

京浜線電車の運転開始時、トラブルが続発したため、鉄道院総裁として新聞に謝罪広告を掲載しました。その後、半年近く運行を休止し、対策を講じた上で運行を再開しました。

政界進出、晩年

憲政会・民政党を支援し、衆議院議員、鉄道大臣を歴任。南満洲鉄道総裁として鉄道人としてのキャリアを終えましたが、糖尿病の悪化により辞任。その後、まもなく亡くなりました。

親族

娘婿に内務官僚の石原雅二郎がいます。

その他

満鉄総裁を務めていた1929年には、画家の岸田劉生が仙石邸の庭を描いた油彩画が残されています。

栄典

1896年（明治29年）に正五位、従四位。1895年（明治28年）に勲四等旭日小綬章、1915年（大正4年）に勲二等瑞宝章、1916年（大正5年）に勲一等瑞宝章を受章しています。

参考文献

中村建治『山手線誕生 半世紀かけて環状線をつなげた東京の鉄道史』（イカロス出版、2005年）

外部リンク

第二十八議会衆議院議員写真列伝（国立国会図書館デジタルコレクション）: 仙石貢略歴及び肖像

仙石貢は、日本の鉄道史において重要な役割を果たした人物の一人であり、その功績は今もなお語り継がれています。

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