仮想固定通信提供者

仮想固定通信提供者（FVNE）とは

仮想固定通信提供者（Fixed Virtual Network Enabler, FVNE）とは、固定通信分野において、自らは電気通信回線などの設備を持たず、他の固定電気通信事業者の回線を利用して電気通信役務を提供する、またはその事業を支援する事業者のことです。

FVNEの主な分類

FVNEには、主に以下の2つの分類があります。

1. コンサルティング型FVNE: 仮想固定通信事業者（Fixed Virtual Network Operator, FVNO）の事業に対し、顧客システムの構築や運用、伝送路設備を持つ電気通信事業者（Network Operator, NO）との契約締結交渉に関するノウハウ提供などのコンサルティング業務を行います。このタイプのFVNEは、自らは電気通信役務を提供しません。
2. 卸売型FVNE: 電気通信設備を設置・運用し、他の電気通信事業者（ISPなど）に電気通信役務を卸売提供する事業者です。

日本におけるFVNEの歴史

日本におけるFVNEの歴史は、旧イー・アクセス（現ワイモバイル）やアッカ・ネットワークスによるADSL回線のISPへの卸売事業から始まりました。これらの事業者は「回線事業者」と呼ばれ、エンドユーザーへのADSLサービス提供、インターネット接続性、付帯電気通信事業（サーバーなど）の提供をISPが行っていました。この場合、物理的な回線（メタル回線）はNTT東西が提供しており、イー・アクセスなどのADSL回線事業者が局舎にコロケーション設備とDSLAMを設置し、ISPまでの接続性を提供していました。この形態では、ユーザーにとっての契約窓口は卸提供を受けるISPであるため、ADSL回線事業者はFVNEの一形態とみなせます。

一方、Yahoo! BBのようにADSL回線事業とISPを兼ねている場合はFVNEは介在せず、またフレッツADSLのようにNTT東西がメタル回線から地域IP網までを提供し、ISPは地域IP網の相互接続点（POI）から先のインターネット接続性を提供する場合は、FVNEとは言えません。

その後、FTTHなどの光サービスが開始されました。Bフレッツなどでは、NTT東西が光回線および地域IP網（後のNGN）の網終端装置（POI）までを提供し、ISPは地域IP網の相互接続点（POI）から先のインターネット接続性を提供していました。また、auひかりや電力系通信事業者などのFTTHサービスでは、自らをユーザーに対するISP窓口とし、主にNTT東西のダークファイバなどをアクセス回線に使用してFTTHサービスを開始しました。これらの場合もFVNEは介在していません。

フレッツ網におけるVNE

2011年7月、NTT東日本とNTT西日本はそれぞれのフレッツ網（NGN）におけるIPv6接続サービスとして、「インターネット（IPv6 IPoE）接続」サービスを開始しました。この形態では、UNIからフレッツ網、ゲートウェイルータを挟みNNIまでをNTT東西が提供し、NNIから先をIPoE接続事業者が提供します。IPoE接続事業者はFVNEとしてISPに回線設備の卸を提供します。このことから、IPoE接続事業者は「VNE（Virtual Network Enabler）事業者」とも呼ばれます。IPoE接続事業者がISPを兼ねる場合もありますが、IPoE接続事業者は自他のISPに公平な役務提供を義務付けられています。ISPはFNOとして自社回線設備の提供は行わず、卸を受けた回線設備と付帯電気通信事業（サーバーなど）を提供します。このような形態は、日本のフレッツ網の「インターネット（IPv6 IPoE）接続」サービスに特有のものです。

VNE事業者とサービス（2022年5月時点）

BBIX株式会社 「IPv6高速ハイブリッド」
日本ネットワークイネイブラー株式会社(JPNE) 「V6プラス」
インターネットマルチフィード株式会社 「transixサービス」
ビッグローブ株式会社「Ipv6オプション」
株式会社朝日ネット「v6 コネクト」
NTTコミュニケーションズ「OCNバーチャルコネクト」
ファミリーネット・ジャパン
アルテリア・ネットワークス株式会社 「XPASS（クロスパス）」
楽天モバイル株式会社

当初、VNEの接続枠は3事業者に限られていましたが、2014年3月以降は16社に拡大されました。

FVNO開始に伴うFVNE

2015年2月から、NTT東西による光回線サービスの卸売が開始されました。電気通信役務を提供する設備（サーバーなど）や電気通信回線を保有せずに、伝送路設備を持つ電気通信事業者（Network Operator, NO）やISPの電気通信役務の一方または双方の卸提供を受けて、一括してユーザーに役務提供を行う「FVNO」（Fixed Virtual Network Operator; 仮想固定通信事業者）という形態が登場しました。FVNOの開始に伴い、これらをサポートするFVNE事業を開始する事業者も現れています。

まとめ

FVNEは、固定通信市場において、柔軟で多様なサービス提供を可能にする重要な役割を担っています。特に、フレッツ網におけるVNEの存在は、IPv6接続サービスの普及に大きく貢献しています。また、FVNOの登場により、FVNEの役割はさらに多様化しており、今後もその動向が注目されます。

関連情報

仮想固定通信事業者 (FVNO)
仮想移動体サービス提供者 (MVNE)
仮想移動体通信事業者 (MVNO)
フレッツ
FTTH

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