仲仙寺 (伊那市)

仲仙寺について

仲仙寺は、長野県伊那市にある天台宗の寺院で、羽広山を山号としています。本尊は十一面観世音菩薩です。この寺は、古くからの歴史を持ち、多くの文化財を所蔵しています。

歴史

寺伝によれば、弘仁7年（816年）に慈覚大師円仁が夢のお告げを受けてこの地を訪れました。経ヶ岳の山中で霊木を見つけ、その木に十一面観音像を刻み、残った木片に法華経を書き写して経塚に納めたことが開山とされています。その後、2世の藤原法師が仏像を本尊として祀り、神護山藤宝寺として建立されました。

鎌倉時代には御射山大社の別当寺院として栄え、かつては12の坊を数えるほどの大規模な伽藍を誇っていましたが、度重なる火災や戦火によって焼失しました。慶長18年（1613年）には、飯田城主の小笠原秀政によって堂宇が再建され、中禅寺と改められました。寛永11年（1634年）には、上野寛永寺の末寺となり、将軍徳川家光から朱印5石を与えられ、仲仙寺と改称されました。

この寺は、「馬の観音様」として、木曽馬の本場である木曽谷や、中馬の本場である伊那谷の農家や馬方から熱く信仰されてきました。

建物

本堂である観音堂は、天和2年（1682年）に三河国の職人によって建立され、安永7年（1778年）には美濃国の職人によって改修されました。堂内には大きな虹梁があり、柱組の間には、承応2年（1653年）に飯田藩主脇坂氏が奉納した絵馬や、文久2年（1862年）の千匹馬をはじめとする20以上の絵馬が奉納されています。内陣には本尊の十一面観世音菩薩の他に、文亀元年（1501年）の修理銘を持つ脇侍の多聞天と持国天の2つの像が安置されています。仁王門には、同年銘のある、京の七条仏所康忠による金剛力士像が安置されています。山門は享保9年（1724年）に建立されました。

薬師堂は、平成元年（1989年）に本堂裏の宝蔵を改修して、薬師瑠璃光殿と改め、本堂裏の回廊の壁に祀られていた薬師如来を遷座しました。客殿の本尊は、運慶作と伝えられる聖観世音菩薩立像です。

境内にはその他、焔魔堂や本坊があり、石垣の上には西国三十三所の石仏が並んでいます。十王堂の下には伊那市考古資料館があり、当寺に奉納された絵馬も所蔵されています。市内の坂下の辻から当寺まで通じる「羽広の道」には、一丁ごとに観音石仏が並んでおり、寄進した村名が刻まれています。

文化

毎年正月には、「羽広の獅子舞」（伊那市無形民俗文化財）が奉納されます。

文化財

室町時代の仁王像 2体（長野県宝）
鎌倉時代の四天王 2体（伊那市宝）
室町時代の鰐口（伊那市宝）
江戸時代の大絵馬 13面（伊那市宝）

仲仙寺は、その歴史的背景と多くの文化財により、訪れる人々に深い感銘を与え続けています。

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