伊予鉄道高浜線

高浜線：四国最初の鉄道が辿る、海の玄関口と松山城下町の物語

愛媛県松山市を走る伊予鉄道高浜線は、1888年（明治21年）に開業した、四国で最初の鉄道です。松山市駅と高浜駅を結ぶ全長9.4kmの路線は、松山の歴史と発展を深く反映しており、沿線には多彩な魅力が凝縮されています。

歴史と変遷：軽便鉄道から現代へ

当初は762mm軌間の軽便鉄道として開業しましたが、その後1067mm軌間に改軌、電化され、複線化も進められました。戦争中は金属供出のため単線化されましたが、戦後徐々に複線が復活し、現在に至ります。梅津寺駅から高浜駅間は現在も単線区間として残されています。高浜線は、古くからの外港である三津浜地区へのアクセス路として機能してきた歴史があり、また、伊予鉄道が整備した高浜港へのアクセスも担っています。現在では、松山観光港への延伸構想も検討されています。

沿線風景：都市と自然の調和

松山市駅を出発した列車は、伊予鉄のターミナルである松山市駅周辺の賑やかな街並みを抜け、大手町駅、古町駅と進んでいきます。古町駅付近はかつて松山城の近くでしたが、現在では市街化が進み、城を直接見ることが難しくなっています。その後、衣山駅、西衣山駅と進んでいくと、街並みが消え、のどかな風景が広がります。三津駅周辺は、古くから漁業で栄え、現在もフェリーの発着場として機能する三津浜港があります。三津駅、港山駅、梅津寺駅と進むにつれ、海岸線に沿って線路が敷かれているのがわかります。梅津寺駅は、ホームのすぐ横に砂浜が広がる、伊予鉄道で最も海に近い駅です。

終点の高浜駅は、かつては松山の玄関口として栄えた港町でしたが、大型船舶の増加に伴い、松山観光港が整備され、主要な航路はそちらに移転しました。それでも、高浜港には現在でも離島への航路が運行されており、往時の面影を残しています。松山観光港へのアクセスは高浜駅からバスを利用することになりますが、高浜線の延伸構想は、地元住民や伊予鉄道にとっても重要な課題となっています。

運行形態：横河原線との直通運転

高浜線は、早朝と夜間を除き、ほとんどの列車が横河原線と直通運転を行っており、15分間隔で運行されています。朝ラッシュ時のみ3～4両編成で運行され、日中は2～3両編成です。ワンマン運転は行われていません。毎年8月に行われる松山港まつり・三津浜花火大会開催時には、臨時列車が運行されます。

松山観光港への延伸構想：未来への展望

高浜駅から松山観光港への延伸構想は、長年検討されてきました。しかし、莫大な建設費や利用者数の減少などが課題となっており、実現には至っていません。2006年には伊予鉄道が専門のコンサルタントに委託した調査結果が公表され、様々な延伸案が検討されました。2024年現在も、愛媛県では港湾計画の改定や松山港中・長期ビジョンの検討が進められており、伊予鉄道も延伸実現に向けて積極的に働きかけています。

駅一覧

高浜線には、高浜駅、港山駅、梅津寺駅、三津駅、山西駅、衣山駅、西衣山駅、古町駅、大手町駅、松山市駅の10駅があります。

その他：平面交差、隧道、坊っちゃん列車

高浜線には、古町駅構内と大手町駅北側で松山市内線と交差する平面交差があります。これは、鉄道線と軌道線が十字に交わる全国でも珍しい光景です。また、かつては衣山隧道と高浜隧道が存在しましたが、複線化工事の際に開削されました。夏目漱石の小説『坊っちゃん』に登場する「マッチ箱のような汽車」は、軽便鉄道時代の高浜線を指しているとされています。

まとめ

高浜線は、四国最初の鉄道として、長きに渡り松山の発展を支えてきました。歴史と自然、そして都市の調和が感じられるこの路線は、これからも愛媛の交通を担う重要な役割を担っていくでしょう。そして、松山観光港への延伸実現が、新たな観光客の誘致や地域活性化につながることが期待されます。

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