伊作勝久

伊作勝久：波乱の生涯を送った室町時代の武将

伊作勝久は、室町時代に活躍した武将で、薩摩国（現在の鹿児島県）の有力豪族である島津氏の分家、伊作氏の5代目当主です。彼の人生は、父の代から続く島津宗家との対立、和解、そして再び戦乱へと巻き込まれる波乱に満ちたものでした。

島津宗家との対立と和解

勝久の父・伊作久義は、伊集院頼久の乱で伊集院氏側に加担し、島津宗家8代当主・島津久豊と激しく争っていました。応永22年（1415年）、勝久は父の代からの宗家との対立を解消するため、鹿児島へ赴き、久豊にこれまでの非礼を詫びました。久豊はこれを受け入れ、両者は一時的に和解します。さらに勝久は、久豊と対立していた総州家の島津久世を説得し、翌年には久豊と久世の対面を実現させました。しかし、この和解は長くは続きませんでした。久豊は宿泊中の久世を包囲し、総州家の所領を要求したため、久世は自害。これを機に、勝久は再び伊集院氏側につき、久豊との戦いに突入することになりました。

戦乱の時代

応永24年（1417年）、久世の家臣が久豊に対し謀反を起こすと、勝久はこれに乗じて久豊と戦うために出陣しました。この戦いで久豊は敗北し、鹿児島へと退却しました。その後、伊集院頼久の乱が終結すると、久豊は勝久を懐柔するため、阿多・日置・南郷など複数の領地を与えました。しかし、翌年には領地を失った阿多氏が謀反。勝久は久豊に援軍を要請しますが、阿多氏に協力する豪族が多く、勝久は敗退してしまいます。

応永26年（1419年）、久豊は長男・忠国を大将として反久豊勢力を攻撃。勝久も忠国の軍に加わり、総州家の居城である木牟礼城を攻めます。阿多氏との紛争は、応永28年（1421年）に阿多氏から奪った田布施を放棄することで終結しました。

伊作氏の内紛と勝久の亡命

勝久が木牟礼城攻めに参加している間、伊作亀丸城では、父・久義と長子・教久が留守を守っていました。しかし、勝久の叔父・十忠は以前から伊作氏当主の座を狙っており、久豊にその野望を告白していました。勝久を快く思っていなかった久豊は、十忠の野望を黙認していました。

勝久が木牟礼城攻めに参加している隙をつき、十忠は久義を殺害。教久も殺害しようとしましたが、教久は家臣に守られ、伊作亀丸城に立て篭もりました。十忠は、久豊の命で実行したと公言し、久豊も十忠の行動を支持。この事態に、伊作氏縁故の豪族たちは勝久の助命を嘆願し、久豊は領地削減と勝久の亡命を条件に助命を認めました。久豊の長子である忠国は、側室が勝久の娘であったことから、勝久に薩摩を出ることを勧める書状を送りました。その結果、勝久は肥後国（現在の熊本県）へ亡命することになりました。

その後

一方、十忠は後に久豊の怒りを買い逃亡し、消息不明となりました。勝久は薩摩を追われる身となりましたが、永享5年（1433年）には、子・教久が家督を継ぐことが許され、伊作氏は家名を保つことができました。

伊作勝久は、激動の時代を生き抜いた武将であり、その生涯は、室町時代の武士の生き様を今に伝える貴重な歴史の一ページです。

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