伊作久義

伊作久義：室町時代の武将、伊作氏4代当主の生涯

伊作久義（いざく ひさよし）は、室町時代に活躍した武将であり、薩摩国（現在の鹿児島県西部）の有力豪族である島津氏の分家、伊作氏の4代目当主です。建徳2年（1371年）に父・伊作親忠から所領を受け継ぎ、伊作氏の領主となりました。

九州探題の島津討伐命令と渋谷氏との戦い

応永2年（1395年）、九州探題としての任務を終え、駿河国守護となった今川了俊は、島津氏討伐の書状を発しました。これに応じ、薩摩北部の渋谷氏が挙兵すると、久義は島津宗家と共にこの鎮圧に参加しました。渋谷氏を撃退することに成功しましたが、この戦いをきっかけに、島津宗家内部では、7代当主・島津伊久と、奥州家2代で当時伊久から家督を譲られていた島津元久との間に、対立が深まっていきました。

島津宗家の内紛と領地拡大

応永4年（1397年）、久義は以前から確執のあった加世田別府城主・別府忠種を攻撃しましたが、島津宗家の仲裁により撤兵を余儀なくされました。しかし、応永6年（1399年）には元久から別府氏の所領を与えるという書状を受け取り、翌年には伊久からも阿多田布施を支配する二階堂氏の所領を与えるという書状を受け取りました。これにより、久義は島津宗家の内紛を利用し、着々と勢力を拡大していきました。

応永11年（1404年）、久義は二階堂氏を攻撃しますが、伊久はこれを非難し、二階堂氏に援軍を送ります。しかし、応永13年（1406年）には元久が久義を援護し、二階堂氏は城を捨てて敗走、田布施は久義の領地となりました。この一連の出来事から、島津宗家の対立が激化し、久義は両者の間で巧みに立ち回っていたことが伺えます。

伊集院頼久の乱と久義の最期

応永18年（1411年）、元久が亡くなると、元久の弟・久豊と元久の寵臣であった伊集院頼久との間で争いが勃発しました。久義は伊集院氏に加担し、久豊を鹿児島から追放する（伊集院頼久の乱）ことに貢献しました。しかし、応永21年（1414年）には、頼久が鹿児島に侵攻するも敗退し、逆に久豊は伊集院氏の一族が支配する給黎に侵攻しました。久義は総州家の島津久世と共に援護に向かい久豊を破りますが、相良氏の援軍を得た久豊に敗れてしまいます。

その後、久義の跡を継いだ子・勝久が久豊に面会し非礼を詫びたため、島津宗家と伊作氏は和解に至りました。しかし、久豊は伊作氏を完全に許したわけではなく、久義の弟・十忠が伊作氏の家督を狙っていることを知ると、これを黙認しました。そして、応永29年（1422年）、家督を狙い挙兵した十忠によって、久義は無念の死を遂げることになりました。

伊作久義は、激動の室町時代を生き抜いた武将であり、島津宗家の内紛を巧みに利用し、伊作氏の勢力を拡大しました。しかし、最期は一族の内紛によって命を落とすという、悲劇的な結末を迎えました。

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