伊十六型潜水艦

伊十六型潜水艦：太平洋戦争を駆け抜けた輸送潜水艦

伊十六型潜水艦は、大日本帝国海軍が建造した潜水艦の艦級で、巡潜丙型とも呼ばれました。同型艦は8隻で、太平洋戦争中にそのほとんどが戦没するという悲劇を経験しました。甲標的による泊地攻撃や通商破壊任務、そして大戦末期には回天攻撃にも利用され、その活躍は多岐に渡りました。

艦型

当初、伊十六型潜水艦は乙型潜水艦として計画されましたが、水上偵察機と搭乗員の不足が判明したため、偵察機の搭載は見送られました。その代わりに、魚雷発射管を2門増設して合計8門とし、魚雷搭載数も20本に増やすことで、魚雷兵装が強化されました。船体は乙型と同じ設計が予定されていましたが、建造を急ぐため、伊七型[[潜水艦]]（巡潜3型）の線図が流用されました。主機は甲型、乙型潜水艦と同じものが搭載されています。

建造

伊十六型潜水艦は、第三次海軍補充計画（③計画）で計画番号S38として5隻（伊16、18、20、22、24）が建造され、1940年から1941年にかけて竣工しました。その後、マル急計画で計画番号S38Bとして6隻が計画されましたが、実際に竣工したのは3隻（伊46、47、48）のみで、1944年に竣工しました。この3隻は、計画番号は変わったものの、船体寸法や兵装などの主要目はほぼ同じです。マル急計画艦は、内殻板がDS鋼から軟鋼に変更されています。

さらに、マル追計画で計画された6隻のうち、3隻（伊52、53、55）が竣工しました。これらは丙型改潜水艦とも呼ばれ、乙型潜水艦から航空兵装を省いたタイプです。詳細については伊五十二型[[潜水艦]]の項目を参照してください。改⑤計画では、40隻の丙型潜水艦の建造が計画されましたが、全てが中止となりました。計画番号はS49Bで、そのうち15隻は丙型改として、残りの25隻は乙型潜水艦の船体に機雷敷設設備を搭載する予定でした。

戦歴

太平洋戦争開戦前に竣工した5隻は、後部甲板に甲標的を1隻ずつ搭載し、真珠湾攻撃に参加しました。その後も、甲標的を用いて各地の泊地攻撃を行い、通商破壊戦にも従事しました。ガダルカナル島に米軍が上陸すると、各艦はソロモン方面に進出し、主に輸送任務に携わりましたが、その中で4隻が失われました。残りの1隻もアリューシャン方面のキスカ島輸送中に戦没しています。大戦後半に竣工した3隻のうち、伊46はフィリピン方面で戦没し、残りの2隻は回天を搭載しましたが、伊48が戦没し、残った伊47は戦後、米軍によって処分されました。

伊十六型潜水艦は、大戦中は主に甲標的の輸送や各地への輸送任務に、大戦後半には回天の搭載任務に用いられました。自ら目立った戦果を上げることは少なかったものの、充電能力や凌波性に優れていました。ただし、運用には課題があったと言えます。

伊20は商船8隻を撃沈しており、同じく8隻を撃沈した伊165と共に、撃沈隻数では日本潜水艦の中で5位にランクインしています。

同型艦

伊号第十六潜水艦：1940年3月30日竣工、1944年5月沈没。
伊号第十八潜水艦：1941年1月31日竣工、1943年2月沈没。
伊号第二十潜水艦：1940年9月26日竣工、1943年9月沈没。
伊号第二十二潜水艦：1941年3月10日竣工、1942年10月沈没。
伊号第二十四[[潜水艦]]：1941年10月31日竣工、1943年6月沈没。
伊号第四十六潜水艦：1944年2月29日竣工、1944年10月沈没。
伊号第四十七潜水艦：1944年2月29日竣工、終戦時残存、1946年4月1日海没処分。
伊号第四十八潜水艦：1944年9月5日竣工、1945年1月沈没。

潜水隊の変遷

伊16型8隻のうち、開戦前に竣工した5隻は巡潜乙型7隻と共に4つの潜水隊を編成しました。全て横須賀鎮守府に配備されたため、横鎮の固有番号1～10までの潜水隊となっています。大戦後期に竣工した3隻は、訓練部隊である第六艦隊第11潜水戦隊で訓練後、第15潜水隊に編入されました。

第一潜水隊

横須賀鎮守府籍の伊16と、巡潜乙型の伊15・伊17で編成されました。先代の第1潜水隊が所属艦の除籍により1929年（昭和4年）4月1日に解隊されて以来、4代目となります。1942年（昭和17年）2月1日に第2潜水隊の伊18、伊20と入れ替わる形で伊15、伊17が第2潜水隊に転出しました。1943年（昭和18年）9月25日に解隊されました。

第二潜水隊

横須賀鎮守府籍の伊18・伊20と、巡潜乙型の伊19で編成されました。先代の第2潜水隊が、所属艦の除籍により1929年（昭和4年）4月1日に解隊されて以来、5代目となります。1942年（昭和17年）2月1日に第1潜水隊の伊15、伊17と入れ替わる形で伊18、伊20が第1潜水隊に転出しました。1944年（昭和19年）4月25日に解隊されました。

第三潜水隊

横須賀鎮守府籍の伊22、巡潜乙型の伊21・伊23で編成されました。先代の第3潜水隊が、所属艦の除籍により1932年（昭和7年）4月1日に解隊されて以来、5代目となります。1942年（昭和17年）12月15日に解隊されました。

第四潜水隊

横須賀鎮守府籍の伊24、巡潜乙型の伊25・伊26で編成されました。先代の第4潜水隊が、所属艦の除籍により1940年（昭和15年）4月1日に解隊されて以来、3代目となります。1942年（昭和17年）8月10日に解隊され、所属艦は第2潜水隊に編入されました。

まとめ

伊十六型潜水艦は、太平洋戦争において様々な任務を遂行しましたが、その多くが戦没するという悲しい結末を迎えました。しかし、その活躍は、日本の潜水艦史において重要な位置を占めています。

参考文献

雑誌「丸」編集部『写真 日本の軍艦 第12巻 潜水艦』（光人社、1990年） ISBN 4-7698-0462-8
外山操『艦長たちの軍艦史』（光人社、2005年） ISBN 4-7698-1246-9
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書 海軍軍戦備(2) 開戦以後』 第88巻、朝雲新聞社、1975年10月。

関連項目

大日本帝国海軍艦艇一覧

外部リンク

* ウィキメディア・コモンズには、伊十六型潜水艦に関するカテゴリがあります。

もう一度検索