伊号第三十潜水艦

伊号第三十潜水艦

伊号第三十潜水艦（いごうだいさんじゅうせんすいかん）は、大日本帝国海軍が運用した伊十五型[[潜水艦]]（巡潜乙型）の11番艦です。この潜水艦は、特に第一次遣独潜水艦としての任務で知られています。当初は伊号第三十五[[潜水艦]]として命名されましたが、1941年11月1日に伊号第三十潜水艦に改名されました。

艦歴

伊30は、1939年の第四次海軍軍備補充計画（④計画）に基づき、呉海軍工廠で1939年6月7日に起工されました。1940年9月17日に進水し、1942年2月28日に竣工しました。竣工と同時に呉鎮守府籍となり、第14潜水隊に編入されました。その後、第14潜水隊は第8潜水戦隊に編入されました。

1942年4月11日、伊30は呉を出港し、ペナンを経て、インド洋での作戦に参加しました。アデンやジブチでの航空偵察、ザンジバルやダルエスサラームでの飛行偵察を実施し、敵艦の情報を収集しました。これらの偵察活動中には、搭載機のフロートが破損するなどのトラブルもありましたが、作戦は継続されました。さらに、モンバサやディエゴ・スアレスでも潜望鏡偵察を行い、敵の動向を把握しました。

第一次遣独作戦

1942年6月17日、伊30は特設巡洋艦報国丸、愛国丸と合流し、燃料補給を受けました。その後、第一次遣独潜水艦として、零式水上偵察機、九一式航空魚雷の設計図、八九式空気魚雷14本、シェラック、雲母などの物資を積み込み、ドイツへ向かいました。この際の暗号名は「モミ」でした。

大西洋へ向かう航海中、吠える40度と呼ばれる海域でエンジン故障が発生しましたが、幸いにも修理することができました。南アフリカ空軍の偵察機に発見されたり、アゾレス諸島近海で敵機の攻撃を受けるなどの危険な状況もありましたが、被害は軽微で済みました。1942年8月6日、伊30はロリアンに到着し、Uボートと同じ灰色迷彩塗装が施されました。

ロリアンでは、96式連装対空機銃が取り外され、代わりに電波探知機「メトックス」やエリコン20ミリ四連装機銃が装備されました。さらに、電子兵器（ウルツブルクレーダーなど）、エニグマ暗号機、魚雷発射誘導装置、その他多くの輸送品を積み込み、ドイツ側から受け取った物資と合わせて、日本へ帰還することとなりました。ドイツ側には魚雷3本、零式水上偵察機1機、航空魚雷の設計図などが引き渡されました。

帰還と沈没

1942年8月22日、伊30はロリアンを出港し、10月8日にペナンに到着しました。その後、シンガポールへのエニグマ暗号機の陸揚げを命じられ、10月10日にペナンを発ち、10月13日にシンガポールに到着しました。しかし、エニグマ暗号機を陸揚げした直後、伊30は触雷し、沈没しました。この事故で14名が亡くなりました。

触雷の原因は、機雷除去後の安全航路が変更されていたにもかかわらず、その情報が伊30に伝わっていなかったためでした。この変更は、遣独作戦中に変更された暗号による暗号文で伝えられていましたが、伊30はこの情報を把握していませんでした。

その後、海軍は搭載物の引き揚げを試み、20ミリ機銃弾や魚雷発射誘導装置、ウルツブルク射撃管制レーダーの設計図などを回収しましたが、多くの荷物は破壊され、最も重要な積荷であったウルツブルク射撃管制レーダーも破損してしまいました。

伊30は1944年4月15日に除籍されました。

戦後

戦後の1959年8月、伊30は北星船舶工業によって浮揚され、設計図などが有効活用されました。その後、1960年2月にかけて解体されました。

犠牲者数

伊30の犠牲者数については、複数の文献で異なる数字が報告されています。

『消えた潜水艦イ52』では14人
『海軍技術研究所』では13人
『深海の使者』では13人

歴代艦長

艤装員長
河野昌通 少佐：1941年10月31日 - 1942年2月25日
艦長
河野昌通 少佐：1942年2月25日 -
遠藤忍 中佐：1942年2月28日 -

参考文献

新延明/佐藤仁志（著）『消えた潜水艦イ52』、日本放送出版協会、1997年、ISBN 4-14-080307-X
中川靖造（著）、『ドキュメント海軍技術研究所』、日本経済新聞社 1987年6月
吉村昭（著）、『深海の使者』、文春文庫 1976年4月、ISBN 978-4-16-716901-5
雑誌「丸」編集部『写真 日本の軍艦 第12巻 潜水艦』光人社、1990年。ISBN 4-7698-0462-8
外山操『艦長たちの軍艦史』光人社、2005年。ISBN 4-7698-1246-9
福井静夫『写真日本海軍全艦艇史』ベストセラーズ、1994年。ISBN 4-584-17054-1

関連項目

* 遣独潜水艦作戦

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