伊号第四潜水艦

伊号第四潜水艦（いごうだいよんせんすいかん）は、大日本帝国海軍が建造した潜水艦です。巡潜1型（伊一型）潜水艦の4番艦として、その艦歴は太平洋戦争の激動期と重なります。本艦は、その特異な設計と数々の作戦行動で、海戦史にその名を刻みました。

艦歴

建造

1923年（大正12年）の艦艇補充計画に基づき、伊号第四潜水艦の建造が決定しました。1926年4月17日、川崎造船所にて起工。1928年5月22日に進水し、1929年4月12日に「伊号第四潜水艦」と命名されました。同年12月24日に竣工し、横須賀鎮守府に所属、第二艦隊第2潜水戦隊第7潜水隊に編入されました。

伊号第四潜水艦は、先行する3隻（伊1～伊3）の建造経験を踏まえ、いくつかの改良が施されました。具体的には、司令塔の装甲強化、電池の増設、内殻の延長、冷却機の装備などが挙げられます。また、主機には国産化されたラ式2号ディーゼルエンジンが初めて搭載されました。

戦前の活動

1930年8月1日、伊号第四潜水艦は姉妹艦である伊3と共に、横須賀鎮守府部隊第8潜水隊を編成します。その後、所属は第一艦隊第1潜水戦隊や横須賀鎮守府部隊の間で何度か変更されましたが、1937年には長江河口沿岸での作戦行動にも参加しています。

1940年11月15日には、潜水母艦長鯨や他の潜水艦と共に第六艦隊第2潜水戦隊を編成しました。これは、先代の第2潜水戦隊が第3潜水戦隊に改名した後の、2代目となります。

太平洋戦争

太平洋戦争開戦時、伊号第四潜水艦は第六艦隊第2潜水戦隊第8潜水隊に所属していました。1941年11月16日、横須賀を出港し、真珠湾攻撃ではオアフ島北東海域に配備されました。

1941年12月14日、伊号第四潜水艦はノルウェー貨物船ホー・マーチャントを雷撃し撃沈しました。その後、米空母レキシントンの捜索に参加し、クェゼリンを経由して横須賀に帰還しました。

1942年2月、伊号第四潜水艦はパラオ、スターリング湾を経てインド洋に進出。同月28日には、英領シンガポール籍の貨客船ファン・ホー・ガンを撃沈。3月にはココス諸島を砲撃し、その後ペナンに寄港しました。

同年4月、伊号第四潜水艦はモルディブ諸島近海でアメリカ貨物船ワシントニアンを撃沈、さらにモルディブ籍の帆船を撃破しました。その後シンガポールを経由し、横須賀に帰還しました。

同年6月、アリューシャン攻略作戦を支援するため横須賀を出港。8月には横須賀に帰投し整備を受けました。その後、第2潜水戦隊の解隊に伴い、第7潜水隊に編入されました。

同年9月には、サンクリストバル島南方沖でアメリカの貨物輸送艦アルヘナを攻撃し、損傷を与えました。その後、エスピリトゥサント島方面での作戦行動や、同島の飛行場への砲撃を試みましたが、目標の捕捉に失敗しました。

同年11月、伊号第四潜水艦はトラック島で大発を輸送できるように改装。ラバウル、ショートランドを経由し、輸送任務に従事しました。

最期

1942年12月16日、伊号第四潜水艦はブナへの緊急輸送のためラバウルを出港しました。18日には揚陸地点に到着するも、米魚雷艇に発見され退避。その後、再度揚陸を試みるも、陸軍兵士との連絡が取れず、輸送任務を断念しました。

帰路についた伊号第四潜水艦は、1942年12月21日、セント・ジョージ岬沖で米潜水艦シードラゴンの攻撃を受け沈没。艦長の上野利武少佐以下、乗員90名全員が戦死しました。沈没地点は南緯05度02分東経152度33分です。

1943年1月5日、ラバウル方面で沈没と認定され、同年3月1日に除籍されました。

戦績

伊号第四潜水艦の戦績は、撃沈3隻（合計13,168トン）、撃破2隻（合計7,647トン）です。

歴代艦長

伊号第四潜水艦の歴代艦長は以下の通りです。

高塚省吾中佐：1929年5月15日 - 1930年4月1日
古宇田武郎中佐：1930年4月1日 - 1931年12月1日
中岡信喜少佐：1931年12月1日 - 1932年10月5日
寺岡正雄少佐：1932年10月5日 - 1935年10月21日
竹崎馨少佐：1935年10月21日 - 1935年11月15日（兼務）
溝畠定一少佐：1935年11月15日 - 1935年12月26日
竹崎馨中佐：不詳 - 1936年6月30日（兼務）
水口兵衛中佐：1936年6月30日 - 1937年12月1日
小林一少佐：1937年12月1日 - 1938年11月15日
江見哲四郎少佐：1938年11月15日 - 1941年10月31日
中川肇中佐：1941年10月31日 - 1942年8月15日
川崎陸郎少佐：1942年8月15日 - 1942年11月6日
* 上野利武少佐：1942年11月6日 - 1942年12月20日（戦死）

売却話

1973年1月、オーストラリアの水産業者が、ニューヘブリデス諸島付近で発見した潜水艦の所有権を主張し、300万ドルで売りに出したという話がありました。業者側は、艦橋に「イ4」の文字があり、大量の水銀を積んでいると主張していましたが、日本政府は、沈没場所のずれや、当時の潜水艦の識別方法から信憑性を否定しました。また、同時期に同額で伊号第一二四潜水艦も売りに出されており、一連の出来事は疑念を残すものでした。

まとめ

伊号第四潜水艦は、その短い生涯の中で数々の作戦に参加し、太平洋戦争の歴史に名を刻みました。その最期は、輸送任務中の米潜水艦による攻撃という悲劇的なものでしたが、その艦歴は、日本の潜水艦技術の一端を今に伝える貴重な記録と言えるでしょう。

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