伊弉諾神宮

伊弉諾神宮

伊弉諾神宮（いざなぎじんぐう）は、兵庫県淡路市多賀に鎮座する神社です。式内社（名神大社）、淡路国一宮であり、旧社格は官幣大社、現在は神社本庁の別表神社となっています。地元では「一宮さん」「伊弉諾さん」として親しまれています。この地名は、かつての旧一宮町（現 淡路市）の由来ともなっています。

祭神

主祭神は、

伊弉諾尊（いざなぎのみこと）
伊弉冉尊（いざなみのみこと）

です。

この二柱の神は、日本神話における国生み・神生みの物語に登場します。『幽宮御記』には、本来は伊弉諾尊のみを祀っていたと記されていますが、1932年（昭和7年）に伊弉冉尊も正式に合祀されました。これは、明治時代に一度は伊弉諾尊一柱とされたものの、地元からの強い要望によって実現したものです。

松前健氏の研究によると、もともと地方神であった伊弉諾尊の神話が、淡路国から大和朝廷の神話に取り込まれたとされています。このことから、伊弉諾尊を皇祖神の親とする信仰が、7世紀中頃以降に宮廷に広まったと考えられています。

歴史

創建

『日本書紀』や『古事記』によると、国生み・神生みを終えた伊弉諾尊が、最初に生まれた淡路島多賀の地に幽宮（かくりのみや）を構えたとされ、これが伊弉諾神宮の起源とされています。この幽宮の地は、滋賀県の多賀大社とする説もありますが、多くの学者は『古事記』の記述や『日本書紀』での表記から、淡路島を支持しています。

概史

文献資料では、『日本書紀』に島に居る「伊奘諾神」や「島神」の記述があり、これらは伊弉諾神宮を指していると考えられています。

『新抄格勅符抄』には、「津名神」に神封が与えられた記録があり、その後「伊佐那支命神」にも加増されたとされています。『日本三代実録』には、「伊佐奈岐命」の神階が昇叙されたことが記されています。

『延喜式』神名帳には「淡路伊佐奈伎神社 名神大」と記載され、名神大社に列格されています。また、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて淡路国一宮として確立していきました。

中世には、国衙が神社の祭礼を管轄し、法華会・桜会などの祭事が催されていました。また、神宮寺も存在していたことが分かっています。妙京寺の記録によると、1280年には社殿が再興され、田村氏が一宮神主として領主を兼ねていました。

江戸時代には、徳島藩主の蜂須賀家から崇敬を受け、一宮供領を得ました。神職は石上氏が世襲しましたが、社家と寺家の間で争いが起こることもありました。1661年には、神社の縁起である『二柱尊縁起』が作成されました。

明治時代に入ると、祭神が一時的に伊弉諾尊一柱とされましたが、後に伊弉冉尊も合祀され、1885年には官幣大社に昇格しました。1954年には、伊弉諾神社から現在の伊弉諾神宮に改称されています。

1995年の阪神・淡路大震災では、一の鳥居が倒壊するなどの被害を受けましたが、氏子の奉納により再建されました。

境内には、香木伝来の石碑があります。

境内

現在の本殿は、1881年に禁足地であった御陵を造成して移築されたもので、三間社流造の美しい建築です。その他、

幣殿
翼廊
中門
渡廊
祓殿・神饌殿
拝殿
神輿庫
昭和天皇御手植の楠
伊勢皇大神宮遥拝所
東神門
樋口季一郎中将像
遺品館
西神門
社務所
貴賓殿
参集殿
東授与所棟
西授与所棟
正門（表神門）
茶室「明日庵」
放生の神池
陽の道しるべ

など、多くの見どころがあります。

摂末社

境内には、以下の摂末社があります。

左右神社
鹿島神社・住吉神社
摂神社・竈神社
岩楠神社
淡路祖霊社
延壽宮

また、境外には、

濱神社
大事忍男神社

などが祀られています。

文化財

境内にある夫婦楠は、兵庫県指定天然記念物に指定されています。また、神像9躯は淡路市指定有形文化財となっています。

現地情報

所在地：兵庫県淡路市多賀740

アクセス：

* バス：淡路交通・神姫バス、淡路市生活観光バス「伊弉諾神宮前」下車すぐ

周辺：兵庫県立淡路香りの公園が隣接しています。

伊弉諾神宮は、国生みの神話に深く関わる歴史と、美しい自然に囲まれた神社です。ぜひ一度訪れて、その荘厳な雰囲気を味わってみてください。

もう一度検索