伊弉諾神社 (生駒市)

伊弉諾神社

奈良県生駒市上町に鎮座する伊弉諾神社（いざなぎじんじゃ）は、その歴史を古く遡ることができる由緒ある神社です。古くは『延喜式神名帳』に記される添下郡の式内社「伊射奈岐神社」に比定される一社と見なされていますが、同じ郡内の「登弥神社」に比定する説も存在します。旧社格は村社であり、かつては隣接する長弓寺の重要な鎮守社として、その境内に祀られていました。

歴史

神社の創建は、天平18年（746年）にさかのぼります。この年、長弓寺が建立された際に、その鎮守神として祀られたのが始まりです。創建当初は「牛頭天王社」と称され、牛頭天王を大宮、八王子を若宮としてお祀りしていました。これは、仏教寺院の守護神として神を祀る神仏習合の形態を示すものです。

国の歴史書には、貞観元年（859年）に当社の神階が従五位下から従五位上へ昇叙したとの記録が残されており、平安時代における朝廷からの崇敬の厚さをうかがい知ることができます。江戸時代に至るまで、長弓寺の寺僧のうちでも最上位にあたる『第一臈』が、当社の神職を兼任していたことが知られています。これは、長きにわたる神仏習合の影響を示す典型的な例と言えます。また、中世には災難も経験しており、文明6年（1474年）には火災に見舞われた記録も残されています。

明治維新後の神仏分離令によって、仏教と神道が明確に分離されることになり、当社は長弓寺から独立した神社となりました。この際に祭神が見直され、それまでの牛頭天王に代わって素盞嗚命が主神とされ、さらに新たに伊邪那岐命が合祀されました。この祭神の変更は、明治政府が推し進めた神道の改革と関連しています。近代社格制度においては、村社に列せられ、地域における重要な神社としての地位を確立しました。

現在、長弓寺の総門前に立つ大きな鳥居が、当社の神域への入口を示しています。境内には、桃山時代のものとされる歴史ある石灯籠が静かに佇んでおり、長い年月の重みを感じさせます。

祭神

現在の主祭神は以下の三柱です。

伊邪那岐命（いざなぎのみこと）
素盞嗚命（すさのおのみこと）
大己貴命（おおなむちのみこと）

境内

境内には以下の建物や社殿があります。

本殿
拝殿（割拝殿）
舞殿
素盞鳴神社
熊野神社・厳嶋神社
善女竜王社
社務所

アクセス

公共交通機関を利用する場合のアクセス方法は以下の通りです。

近鉄奈良線富雄駅より奈良交通バス（高山方面行き）に乗車、「生駒上町」バス停で下車後、徒歩約10分。
近鉄奈良線学園前駅より奈良交通バス（学研北生駒駅行き）に乗車、「真弓4丁目」バス停で下車後、徒歩約15分。

伊弉諾神社は、かつての長弓寺鎮守としての歴史、神仏分離を経て祭神を改めた近代の変遷、そして古式内社に比定される可能性を持つなど、奈良時代の創建から現在に至るまで、日本の宗教史や地域の歴史を物語る貴重な存在です。

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