伊東祐清

伊東祐清（いとう すけきよ）は、平安時代末期に活躍した武将であり、伊豆国の豪族である伊東祐親の次男として生まれました。彼の名は、文献によって祐忠、祐氏、祐兼、祐長などとも記されています。

生涯において、祐清は源頼朝と深い関わりを持ちました。頼朝の乳母である比企尼の三女を妻としており、伊豆に流されていた頼朝とは親交がありました。安元元年（1175年）には、父である祐親が平家の家人として頼朝を討とうとした際、祐清は頼朝に危険を知らせて逃がしたという逸話があります。また、『曽我物語』によれば、祐清は頼朝に、自身の烏帽子親である北条時政を頼るよう勧めたとされています。

治承4年（1180年）に頼朝が挙兵すると、平家方であった父・祐親と共に頼朝軍に捕らえられました。頼朝は祐清が過去に自身を助けた恩に報いようとしましたが、祐清は父が頼朝の敵である以上、恩賞を受けることはできないと辞退し、平家に味方するために上洛しました。その後、平家軍に加わった祐清は、北陸道の合戦で討ち死にしたとされています。『平家物語』では、篠原合戦で伊東九郎祐氏が討ち死にしたと記されています。

しかし、『吾妻鏡』には異なる記述も存在します。養和2年（1182年）には、父・祐親が自害した際、祐清も頼朝に死を願い、頼朝がやむなく祐清を誅殺したとあります。この記述は、祐清が後に平家軍に加わり北陸道で討ち死にしたとする記述と矛盾しており、祐清の最期については諸説あることがわかります。

祐清の妻である比企尼の三女は、夫の兄弟である河津祐泰が工藤祐経に討たれた後、祐泰の遺児（曾我兄弟の弟）を引き取って育てました。その後、祐清とは離縁または死別し、平賀義信に再嫁しています。頼朝は、祐清に命を救われた恩義を忘れず、祐清の遺児である祐光に伊東荘を与えました。祐光の子孫は後に設楽荘や尾張に移り住み、後世へと続いています。

また、後北条氏や徳川氏に仕えた仁杉氏の系譜には、通説では工藤祐経の子とされる伊東祐光を祐清の子として掲載し、仁杉氏をその子孫と位置づける説もあります。さらに、日本画家の伊藤信次氏が昭和37年頃に調査した「寺野伊藤系譜」によれば、伊藤信次氏は祐清の子孫であるとされています。この調査には、歴史家の内田旭氏、静岡葵文庫の飯塚伝太郎氏、気賀正明寺の林袋雲氏、三河郷土史家の清水伊三次氏らが協力したとされています。

このように、伊東祐清は源平合戦の動乱期において、複雑な立場と運命を背負った人物であり、彼の生涯は多くの謎と歴史の深淵を垣間見せてくれます。子孫についても複数の説が存在し、現代においてもその足跡は様々な形で語り継がれています。

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