平賀義信

平賀義信とは

平賀義信（ひらが よしのぶ/みなもと の よしのぶ）は、平安時代末期の武将であり、河内源氏の流れを汲む人物です。父は新羅三郎義光の四男である源盛義で、平賀氏の祖となります。

平治の乱での活躍

平治元年（1159年）の平治の乱では、源義朝に従い出陣しました。この時、義信は「平賀四郎義宣」として『平治物語』に登場し、三条河原の戦いで勇猛に戦う姿が描かれています。義朝は、義信の活躍を見て「源氏には無駄な者はいない。平賀を討つな、義宣を討つな」と郎党に命じたとされています。義朝の敗戦後、義信は東国への逃避行に同行した7人のうちの1人となり、尾張国で義朝の最期を見届けた後、生き延びて信濃へと向かいました。

また、『平治物語』では、佐渡式部大輔重成と共に「従子」と記されていますが、この場合の従子は血縁上の従兄弟ではなく、「一門ではないが、近い源氏」という意味で使われていたと考えられています。あるいは「一族同様に信頼した若武者」と解釈されることもあります。

源平合戦での動向

治承4年（1180年）に源頼朝が挙兵した後、遅れて源義仲も信濃で挙兵しました。義信の動向は不明ですが、この時期は本拠地の信濃に逼塞していたと推測されています。義仲は上州へ移動後、小県郡依田を拠点に横田河原の戦いに臨みましたが、この時義仲軍は「木曽党」「サコ党」「武田之党」で構成されており、「サコ党」は佐久党、つまり平賀氏が中心であったと考えられています。

最終的に、平賀氏は頼朝の麾下に参加しました。寿永2年（1183年）に頼朝が義仲を討つため信濃へ出陣した際、頼朝軍は碓氷峠を越えて佐久郡に入り、依田城を落として善光寺平で義仲軍と対峙しています。この戦いで、佐久地方がほとんど無抵抗で制圧されたことは、佐久を本貫地とする平賀氏の協力なしには考えられません。

鎌倉幕府での活躍

元暦元年（1184年）3月、義信の子・惟義が伊賀守護に任じられ、義信自身も同年6月に頼朝の推挙により武蔵守に任官し、国務を掌握しました。武蔵守として善政を敷き、国司の模範とされました。さらに、文治元年（1185年）8月には、惟義が相模守に任じられ、鎌倉幕府の基幹国である両国の国司を父子が務めることになります。

文治元年（1185年）9月には、勝長寿院で行われた源義朝の遺骨埋葬に際して、義信と惟義は義朝の遺児・頼隆と共に遺骨に近侍することを許されており、頼朝からの信頼が非常に厚かったことが伺えます。また、この時期の席次において、義信は源氏門葉の筆頭と見なされていました。

頼朝の乳母である比企尼の三女を妻とし、二代将軍源頼家の乳母父にもなっています。建久4年（1193年）の曾我兄弟の仇討ちでは、妻の連れ子で義信の養子となっていた河津祐泰の遺児が事件に連座して自害するという悲劇も経験しています。頼朝の死後も源氏一門の重鎮として重きをなし、源頼政の子である源頼兼を除いて、他の御家人よりも常に上座に座していたことが記録されています。

建仁2年（1202年）には、永福寺で頼家と北条政子が、頼家の乳母であり義信の妻でもある比企尼三女の供養を行っています。建仁3年（1203年）の比企能員の変では、北条時政の婿である義信の子・朝雅が北条氏側として比企氏討伐軍に加わっています。また、三代将軍源実朝の元服の際には、加冠役（烏帽子親）を務めました。

晩年と死

義信の没年ははっきりしていませんが、『吾妻鏡』の承元元年（1207年）2月20日に「故武蔵守義信入道」とあることから、この日より前に死去したことは確かです。

源義宗猶子説

義信は初め、父の従兄弟にあたる源義宗の猶子になったという説がありますが、義宗が嘉承元年（1106年）頃には死去したとされているため、37年後に生まれた義信がその猶子になったとは考えにくいとされています。また、義宗の猶子となった義信は、義宗の弟である義親の長男・対馬太郎義信であるとする説もあり、こちらの方が年齢的に辻褄が合います。このため、対馬太郎義信の伝承が、平賀四郎義信の伝承として誤って伝わった可能性が指摘されています。

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