伊豆クレイル

「伊豆クレイル」とは

「伊豆クレイル（IZU CRAILE）」は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が期間限定で運行していた臨時快速列車、およびその専用車両に付けられた愛称です。「のってたのしい列車」の一つとして、伊豆方面への旅行者に特別な体験を提供することを目的としていました。

この列車名は、イタリア語で「大人、成長した」を意味する「Cresciuto（クレッシュート）」と「train（トレイン）」、「〜に適した」という接尾辞「ile（イル）」を組み合わせた造語であり、「大人に適した列車」という意味が込められています。また、その表記「CRAILE」には、C（クール）＋RAIL（レール）＋E（エレガント）という語呂合わせも含まれていました。ロゴマークは、IZUの「I」、CRAILEの「C」、そして伊豆にゆかりのある桜のモチーフを組み合わせたデザインでした。

運行概要と特徴

伊豆クレイルは、主に土休日を中心に、小田原駅と伊豆急下田駅の間で1日1往復運行されていました。種別は快速列車でしたが、大きな特徴として、全ての車両がグリーン車指定席として運用された点が挙げられます。これは、「のってたのしい列車」シリーズの中でも唯一の事例でした。

全車グリーン車指定席であったため、乗車券のほかにグリーン券と指定席券が必要でした。定期券や青春18きっぷ、北海道&東日本パスといった企画乗車券類は利用できませんでした。なお、「踊り子」などと同様に、伊豆急行線内のみのグリーン券購入も可能でした。

運行ルート上では、景観を楽しむための特別なサービスが実施されていました。下り（伊豆急下田行き）列車は、根府川駅周辺や東伊豆海岸線の特に眺めの良い場所で速度を落とした徐行運転を行いました。一方、上り（小田原行き）列車は、東伊豆海岸線のビューポイントで一時的に停車し、乗客が景色をゆっくり堪能できるように配慮されていました。

停車駅は、小田原駅、熱海駅、伊東駅、伊豆高原駅、伊豆熱川駅、伊豆稲取駅、河津駅、伊豆急下田駅でした。運行開始に際しては、停車駅の一部の駅名標に伊豆クレイルのロゴや装飾が施されるという特別な装飾も行われました。

使用車両と車内設備

伊豆クレイル専用として使用された車両は、かつて特急「フレッシュひたち」などで使用されていた651系1000番台を改造した、IR01編成（4両編成）でした。この車両は元々勝田車両センターに所属していたK206編成を大宮総合車両センターで改造し、2016年4月13日付で国府津車両センターに転属配置されたものです。外観は従来の白色を基調としつつ、薄いピンク色の帯がアクセントとして追加されていました。

車内は全席グリーン車指定席で、総定員数は98名でした。特徴的なのは、号車ごとに異なるサービスが提供されたことです。

1・3号車: 食事やドリンクサービスがセットになった旅行商品専用の車両として販売されました。下り列車ではランチセット（弁当）、上り列車ではアフタヌーンカフェセット（軽食とスイーツ）が提供され、これらは東京都目黒区のフレンチレストランのオーナーシェフが監修しました。
4号車: こちらは一般の乗客向けで、乗車券とグリーン券、指定席券のみで購入・利用が可能でした。

編成の中にはラウンジカーも設けられており、そこには専任のオーナーシェフが乗務し、オリジナルメニューを提供していました。また、専任のアテンダントも乗務し、きめ細やかな接客サービスを提供していました。

運行の歴史と終了

伊豆クレイルの運行は2016年7月16日に開始されました。その後、約4年間にわたって伊豆方面への臨時列車として多くの旅行者に利用されました。

当初は2020年3月29日を通常の臨時列車としての最終運行日とし、同年4月4日には静岡デスティネーションキャンペーンのアフターキャンペーンのオープニング列車として、6月28日には同キャンペーンのクロージング列車として運行を終了する予定でした。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受け、4月4日の運行および6月28日に予定されていたラストラン運行は中止となりました。このため、2020年3月29日の運行が結果的に伊豆クレイルの事実上の最終運行となりました。運行期間は約4年弱で幕を閉じることとなりました。

運行終了後、使用されていたIR01編成は2020年10月8日から9日にかけて、長野総合車両センターへ廃車のため回送されました。

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