伊賀良荘

伊賀良荘（いがらのしょう）

伊賀良荘は、信濃国伊那郡（現在の長野県飯田市から下[[伊那郡]]南部）に存在した荘園です。天竜川左岸の段丘、笠松山の麓を中心に広がっていました。荘園の領域は、松川以南から阿知川にかけて徐々に南へと拡大し、最終的には三河国境にまで至る南北十里、東西五里にも及ぶ広大なものとなりました。阿南町の二善廃寺で見つかった応永19年（1412年）銘の棟札や、瑞光院に残る享禄元年（1528年）の鐘銘から、この地が伊賀良荘の一部であったことが確認できます。

歴史

平安後期の院政期には、伊賀良荘は摂関家の門跡である妙香院に寄進されました。応和元年（961年）の荘園目録には、その名が記録されており、信濃における皇室領荘園としては、最も初期に成立した荘園の一つとされています。その後、伊賀良荘は堀河天皇が建立した尊勝寺の所領となりました。

鎌倉時代に入ると、『吾妻鏡』の文治2年（1186年）3月12日の条に、後白河法皇が源頼朝に示した「関東御知行国々内乃具未済庄々注文」に伊賀良荘の名が登場します。しかし、その2年後の文治4年（1188年）には、八条院領へと移管されています。地頭職は当初、北条時政が務めていましたが、嘉暦4年（1329年）の幕府下知状案では、江馬氏がこれを引き継ぎました。その後、四条頼基が地頭代として伊賀良荘に入部し、荘内の河路郷に開善寺を創建しています。『色部文書』によると、江馬氏は荘の一部を南禅寺に寄進したとされています。

室町時代には、伊賀良荘は小笠原氏にとって信濃における重要な拠点となりました。文明年間以降、伊那小笠原氏の嫡流争いが起こり、伊賀良荘の領有を巡って、松尾城を拠点とする松尾小笠原氏と、鈴岡城を拠点とする鈴岡小笠原氏の間で激しい抗争が繰り広げられました。最終的に、松尾小笠原氏が勝利し、伊賀良荘を統一しましたが、その後、府中小笠原氏の攻撃を受けると、甲斐国の武田氏を頼り、その支配下に入りました。

この過程で、荘園制度は解体され、伊賀良荘は阿知川を境に、国衆領の「松尾領」と「下条領」に分割されました。武田氏の支配下に入った後、永禄3年（1560年）には、河路郷が諏訪大社下社に安堵されています。また、伊賀良荘全体で、諏訪大社の造営や御射山祭における頭役を務めていたことが記録されています。

脚注

『日本歴史地名大系 20 長野県の地名』（平凡社、1979年）
『国史大辞典 1』（吉川弘文館、1989年）
『角川日本地名大辞典 20 長野県』（角川書店、1990年）
『長野県史 通史編 第2巻 古代2』

もう一度検索