江馬氏

江馬氏：飛騨の戦国大名

江馬氏は、桓武平氏経盛流を称する日本の氏族で、飛騨国吉城郡高原郷を本拠地とした一族です。その歴史は、平安時代末期に平経盛の妾腹の子である江馬輝経が、伊豆国の北条時政に養育され、江馬小四郎と名乗ったことに始まるとされています。

室町時代から戦国時代へ

室町時代には、江馬氏は室町幕府政所執事の伊勢氏と繋がりを持ち、江馬左馬助は伊勢貞宗の庶子とされています。応仁の乱では東軍に属しました。戦国時代に入ると、江馬時経が登場し、飛騨の有力な国衆として台頭します。時経は飛騨北部を勢力下におき、国司である姉小路家や三木氏（のちの姉小路氏）と激しく争いました。

戦国時代の動乱と武田・上杉との関係

飛騨の国衆同士の争いは、甲斐の武田信玄と越後の上杉謙信が信濃を巡って争った川中島の戦いと深く関わっていました。三木氏と江馬輝盛が上杉方に属したのに対し、江馬時盛は武田方に付きました。永禄7年（1564年）には、武田氏の支援を得て三木氏・江間輝盛を圧倒し、輝盛も武田氏に帰属しました。同年、武田氏の越中侵攻では椎名氏を攻めて戦功を挙げ、越中国新川郡中地山城が輝盛に与えられました。その後、椎名康胤も武田氏に降りますが、元亀2年（1571年）に松倉城の戦いで上杉謙信に敗れ、松倉城には上杉家重臣の河田長親が入りました。これにより、江馬氏は上杉氏と直接接することになります。

元亀4年（1573年）に武田信玄が亡くなると、輝盛は家臣の河上富信を通じて上杉氏（河田長親）に信玄の死を伝えました。しかし、その書状では上杉氏に詫びを入れており、武田氏との両属状態にあったと考えられます。天正3年（1575年）には再度上杉氏に詫びを入れていますが、翌天正4年（1576年）には上杉謙信の飛騨討伐を受け、三木氏と共に降伏しました。

織田氏の台頭と江馬氏の滅亡

その後、尾張の織田氏の力を背景にした三木自綱の勢力が拡大します。天正6年（1578年）7月16日、江馬輝盛は時盛を殺害します。時盛が武田家に人質に出していた江馬信盛を当主に据えようとしたためとされています。同年10月には、三木氏の支援を受けた織田勢が越中月岡野に攻め込み、江馬氏も織田家に従属しました（月岡野の戦い）。

天正10年（1582年）6月の本能寺の変で織田信長が死去すると、織田氏に帰属していた姉小路氏と争いました。しかし、輝盛は八日町の戦いで戦死し、江馬氏は事実上滅亡しました。輝盛の後継とみられる江馬時政は金森氏を頼りましたが、後に反乱を起こして殺害されました。

江馬氏の家臣団

江馬氏の家臣団としては、河上氏を筆頭に、和仁氏、神代氏、吉村氏の四氏が「江馬四天王」として知られ、さらに大平氏、大倉氏、大森氏、大坪氏の四氏を加えて「江馬の八大家」と称されました。

参考資料

大日本地誌大系刊行会 編『国立国会図書館デジタルコレクション 大日本地誌大系. 第10冊 江馬家後鑑録』1914-1917年。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1879466/169
近藤瓶城 編『国立国会図書館デジタルコレクション 史籍集覧. 第14冊　飛驒國治亂記』1902-1926年。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1920363/070

関連項目

江間村
高原諏訪城

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