伏完

伏 完（ふく かん）について

伏完は、中国の後漢末期において重要な役割を果たした人物である。彼は後漢最後の皇帝である献帝の皇后、伏寿の父として特に有名だ。伏完は、現在の山東省濰坊市諸城市にあたる地域で生まれ、名門の家柄に生まれ育った。彼の家系は済南の伏生と伏勝にその起源を持ち、伏勝の子孫として、さらに八世代にわたる政界の名士として知られている。

生涯と政治的背景

伏完は名門の子であり、彼の祖先には太傅の伏理や大司徒の伏湛などが含まれている。父は大司農を務めた伏質であり、こうした背景から彼の名声は非常に高かった。また、伏完は荀彧と親しい関係にあったとも伝わっている。彼自身は、政治家としてだけでなく、献帝の皇后の父という立場を持っていたため、その影響力は絶大なものだった。

196年、献帝が洛陽で宮廷を営む際、伏完は輔国将軍及び儀同三司に任命される。しかし、彼は自らの外戚としての立場が曹操に疎まれていることを感じ取り、印綬を返上するという選択をする。その後、中散大夫に昇進し、やがて屯騎校尉の職へと移った。彼の一連の行動は、曹操との緊張関係を示唆している。

200年、董承らが曹操に対する暗殺未遂のクーデターを起こすが、その失敗によって大きな悲劇が引き起こされる。曹操は董承の娘、董貴人を処刑するに至り、これを受けて伏皇后は非常に動揺し、父である伏完に対し、曹操を排除すべきとの手紙を送った。しかし、伏完は曹操に対して何のアクションも起こさないまま、209年に死去してしまう。この結果として、彼の息子伏典が後を継ぐことになる。

214年には伏皇后が曹操排除を唱えていた事実が明らかになり、曹操は彼女を「廃后」として幽閉し、さらに伏家の一族を処刑することに至った。この事件は、漢王朝の外戚である伏氏が排除され、曹氏が権力を掌握する道を開くきっかけとなった。

『三国志演義』における伏完の描写

小説『三国志演義』の中では、献帝が曹操に対してクーデターを試み、失敗してしまった際の描写がある。そこで、伏皇后は父の伏完と共謀し、曹操を打倒しようと計画を立てる。しかし、皇后との書簡のやりとりの中で、その情報が曹操の手に渡ってしまう。その結果、伏完と伏皇后、さらに一族全員が処刑されるという悲劇が描かれている。また、伏皇后が処刑された後に新たに曹節が皇后として迎えられ、曹操による専横が一層強化される様子も描かれている。

このように、伏完は後漢末期の政治ドラマの中で重要な役割を果たした人物であり、その生涯は様々な歴史的な試練と葛藤に満ちていた。

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