大司農

大司農（だいしのう）

大司農は、古代中国に置かれた官職であり、主に国家の財政を管理する役割を担っていました。

漢

秦代と前漢の初期には治粟内史と称されていましたが、景帝の時代に大農令と改称され、武帝の時代に大司農と改められました。新朝の時代には一時的に名称が変更されましたが、後漢の成立とともに再び大司農に戻されました。武帝の時代以降は、九卿の一つとして重要な地位を占めました。

前漢における大司農は、税として徴収された穀物と銭貨を管理し、国家の財政を統括する役割を担っていました。皇帝の財産を管理する少府と並び、国家財政の重要な部分を担っていました。また、均輸・平準法による物資の輸送や売買、塩・鉄の専売、全国に点在する国営農場も管理下に置いていました。

大司農には、太倉令（穀物の管理）、均輸令（物資供給）、平準令（物資価格の調節）、都内令（銭貨の管理）、籍田令（皇帝の直轄農地の管理）などの属官がいました。

漢末以降になると、財政は尚書が主管するようになり、各種財政・物資を管理する官が設置されたため、大司農の職掌は縮小していきました。

三国時代

三国時代の魏、蜀、呉も大司農を設置しました。漢代には租税の徴収や銭・穀物の管理、塩鉄の専売など、朝廷における財政の主管機関でしたが、三国時代になると業務の大部分が他の官衙に移されました。

南北朝時代以降

南北朝時代以降、大司農の業務は新設された尚書に移管され、財務業務を主管せず、朝廷の倉庫を管理する官職となり、司農卿と称されました。この名称は隋代から宋代にかけて沿襲されました。元代になると大司農司が設置され、農業振興や水利、天災などへの対応がその職掌となりましたが、明代に廃止され、大農司の業務は戸部に移管されました。しかし、明清代には戸部が糧田租税の業務を主管したことから、戸部尚書を大司農と称することがありました。

参考文献

中央研究院・歴史語言研究所「漢籍電子文献資料庫」
司馬遷『史記』
小竹文夫・小竹武夫訳『史記』1から8、筑摩書房、ちくま学芸文庫、1995年
班固『漢書』
小竹武夫訳『漢書』1から8、筑摩書房、ちくま学芸文庫、1998年
大庭脩監修、漢書百官公卿表研究会『『漢書』百官公卿表訳注』、朋友書店、2014年

関連項目

中国の官制

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