伐休尼師今

伐休尼師今（ばっきゅう にしきん）

伐休尼師今（生年不詳 - 196年4月）は、新羅の第9代の王（在位:184年 - 196年）であり、姓は昔（ソク）。父は第4代の脱解尼師今（タレ ニシキン）の子である仇鄒角干（キュチュウカクカン）、母は金氏の只珍内礼夫人（チジンナイレイブジン）です。

即位の背景と治世

184年3月、先代の阿達羅尼師今（アダルラ ニシキン）が嗣子を残さずに死去したため、国人の推挙により伐休尼師今が王位に就きました。彼の治世は、軍事制度の改革と、百済との激しい交戦が特徴的です。

185年には、初めて軍主の制度を設け、波珍飡（パジンチャン、4等官）の金仇道（キム・クド）と一吉飡（イルキルチャン、7等官）の金仇須兮（キム・クスヘ）を任命し、召文国（ソムンこく、現在の慶尚北道義城郡）を討伐させました。これにより、国内の軍事体制が強化され、周辺国への影響力を高めることを目指したと考えられます。

百済との交戦

伐休尼師金の治世中、百済との交戦が激化しました。188年2月には、百済が母山城（モサンジョウ、現在の忠清北道鎮川郡）を攻めましたが、金仇道がこれを撃退しました。翌189年には、金仇道が狗壌（クヤン、現在の忠清北道沃川郡）で百済軍と戦い、勝利を収めています。しかし、190年8月には、百済が円山郷（ウォンサンヒャン、現在の慶尚北道醴泉郡）に攻め入り、缶谷城（フンゴクジョウ）を包囲しました。この時、金仇道は騎兵500を率いて反撃し、蛙山（アサン）まで出撃しましたが、百済軍に敗北を喫しました。これらの戦いから、当時の新羅と百済の国境地帯では、互いに一進一退の攻防が繰り広げられていたことがわかります。

倭人の流入

193年6月には、倭人（当時の日本列島に住む人々）が飢饉に見舞われ、食糧を求めて1千余人が新羅に流入したという記録が残っています。当時の倭の状況を物語る記述です。

死去

伐休尼師今、在位13年にして196年4月に死去しました。埋葬地は伝わっていません。

まとめ

伐休尼師金は、内政においては軍事制度の改革を行い、外交においては百済との激しい交戦を繰り広げた王でした。また、倭人の流入という異例の事態にも対処するなど、激動の時代を生き抜いた王として評価できます。


参考文献
* 金富軾撰、井上秀雄訳注『三国史記』第1巻、平凡社〈東洋文庫372〉、1980年 ISBN 4-582-80372-5

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