阿達羅尼師今

阿達羅尼師今（あだつら にしきん）

阿達羅尼師今（生年不詳 - 184年3月）は、新羅の第8代の王（在位:154年 - 184年）であり、先代の逸聖尼師今の長男です。姓は朴（ぼく）。母は朴氏の支所礼王の娘である阿礼夫人、王妃は第6代祇摩尼師今の娘である内礼夫人です。

治世

154年2月に先王の死去に伴い、王位に就きました。当時の国際情勢として、新羅は北方の靺鞨（まっかつ）やその背後にいる高句麗（こうくり）からの脅威に晒されており、百済（くだら）との間には緩やかな同盟関係が保たれていました。しかし、阿達羅尼師今の時代になると、百済との関係は悪化し、交戦状態へと移行していきます。

165年10月には、阿飡（アチャン）の吉宣（キルソン）が謀反を企てたことが発覚し、処刑を恐れて百済へと亡命しました。阿達羅尼師今はこの吉宣の身柄引き渡しを百済に要求しましたが、百済の蓋婁王（がろうおう）はこれを拒否したため、新羅は百済への侵攻を開始しました。この戦いでは、百済軍が城に籠って防戦したため、新羅軍は食糧不足に陥り撤退を余儀なくされました。しかし、167年7月には百済が新羅の西部辺境の2つの城を奪い、住民1000人を捕虜とする事態が発生しました。これに対し、同年8月には一吉飡（イチキルチャン）の興宣（フンソン）に兵2万を率いさせ百済を討伐させるとともに、阿達羅尼師今自身も8千の騎兵を率いて漢水（かんすい、漢江）まで出撃しました。この事態に恐れをなした百済は、先に捕虜とした住民を返還し、和睦を申し入れました。しかし、170年10月には百済が再び新羅の国境付近に侵攻するなど、両国の緊張関係は続きました。その後しばらくは直接的な交戦に関する記述は見られなくなりますが、次王の時代である188年以降には、両国の間で頻繁に交戦が行われるようになります。

173年5月には、倭（わ）の女王卑彌呼（ひみこ）が使者を送ってきたと記録されています。しかし、この記述については、『三国志』東夷伝倭人条の景初2年（238年）の記事を元にした創作であり、干支を一運遡らせたものと考えられています。

184年3月、阿達羅尼師今は在位31年にして死去しました。埋葬地に関する記述は残されていません。『三国史記』新羅本紀・伐休尼師今紀には、阿達羅尼師今に子がなかったため、伐休尼師今（ばっきゅう にしきん）が王位を継いだとされていますが、後代の第53代神徳王（しんとくおう）は阿達羅尼師今の遠い子孫であるとされています。この点について、井上秀雄は神話の創作や王統系譜の作為である可能性を指摘し、史実として論じるべきではないと述べています。

参考文献

* 金富軾撰、井上秀雄訳注『三国史記』第1巻、平凡社〈東洋文庫372〉、1980年 ISBN 4-582-80372-5

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