伝習隊

伝習隊とは

伝習隊は、江戸幕府がフランス軍事顧問団の指導を受けて編成した西洋式軍隊です。幕府陸軍の精鋭部隊として、戊辰戦争で旧幕府軍の主力となりました。隊長の大鳥圭介は、箱館政権において陸軍最高位の陸軍奉行に就任しています。

沿革

1867年（慶応3年）1月、フランス軍顧問団が来日し、勘定奉行の小栗忠順の主導により伝習隊が創設されました。士官、歩兵、砲兵、騎兵の各連隊が編成され、フランス式の軍事教育が行われました。しかし、旗本の応募は少なく、博徒、やくざ、雲助、馬丁、火消などの江戸の無頼の徒が兵士として集められました。これは、農家の次男以下を集めた御料兵が兵士としての気質に疑問があったため、大鳥圭介の提案により実施されたものです。当時の江戸では、大名旗本が領地に帰国したことで失業した者たちが多く、彼らは身体が頑強で身長が五尺二寸以上という条件を満たしていたため、多数が入隊しました。

伝習隊では、号令がすべてフランス語で行われ、最新鋭の装備が使用されました。これらの装備は、駐日公使レオン・ロッシュを通して購入され、フランス皇帝ナポレオン3世からは2中隊分の野砲と山砲が贈られました。

幕府陸軍の歩兵隊は、江戸城西の丸下、大手前、小川町、三番町に設けられた屯所に入営しました。伝習隊も同様で、大鳥圭介の指揮下、大手前の第一大隊（隊長：小笠原石見守）、小川町の第二大隊（隊長：本多幸七郎）、三番町の第三大隊（隊長：平岡芋作）が編成されました。当初は四大隊でしたが、小川町の一大隊が幕府陸軍第6連隊に吸収されています。

1868年（慶応4年）1月の鳥羽・伏見の戦いでは、伝習隊の一部が幕府陸軍の一員として参戦しました。しかし、江戸開城時には、多くの旧幕府軍兵士が新政府に帰順する中、伝習第一大隊と第二大隊を中心に約1100名が脱走し、大鳥圭介に合流しました。

戊辰戦争での活躍

脱走した伝習隊を含む約2000名は、下総市川の国府台に集結し、大鳥圭介を総督、土方歳三を参謀として部隊を再編成しました。その後、北関東へ進軍し、凌霜隊や貫義隊などを吸収して兵力を増強、小山で西軍を撃破しました。さらに宇都宮を奪還するなど、各地で勇猛果敢な戦いぶりを見せました。

別行動をとった旗本子弟の部隊、草風隊や回天隊なども合流し、伝習士官隊を編成。北関東から北陸、会津へと転戦し、母成峠の戦いでは大きな被害を受けました。その後、歩兵隊は大川正次郎、士官隊は滝川充太郎が指揮を執り、北海道松前の二股口の戦いでは新政府軍を破るなどの戦果を上げましたが、最終的には五稜郭へ向かいました。

1869年6月27日（明治2年5月18日）、榎本武揚率いる五稜郭の旧幕府軍が降伏したことで、伝習隊も解散し、戊辰戦争は終結しました。

一方、伝習第三大隊を主体とする約1200名は新政府に帰順し、その一部は長州藩傘下の帰正隊として新政府軍に編入されました。彼らは、房総半島の鎮撫活動や奥州での戦いに従事し、その後、箱館へ出陣して脱走した旧幕府軍と戦いました。

参考文献

野口武彦 『幕府歩兵隊-幕末を駆けぬけた兵士集団』 中央公論新社〈中公新書〉、2002年
星亮一『大鳥圭介』 中央公論新社〈中公新書〉2011年

関連項目

幕府陸軍
戊辰戦争
宇都宮城の戦い
北越戦争
会津戦争
箱館戦争
* 彰義隊

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