位禄

位禄（いろく）の概要

位禄とは、日本の律令制度において官人に対して支給される禄の一形式です。この制度は大宝令に基づいており、それまでの食封が四位以下の官人に対して位禄に変更されました。養老令も同様の規定を設けており、官人の生活を支えるための重要な仕組みとなっていました。

支給内容とその背景

位禄では、絁や綿、糸、布といった資材が支給品目に含まれており、これらは毎年10月（後に11月）に大蔵省から支給されました。支給の財源は、諸国からの庸や調によって確保されていましたが、位禄の切り替えは当初非常に遅れ、実際には位封の支給が続くこととなりました。五位の官人は慶雲2年11月4日（705年11月24日）から、四位の官人は大同3年10月19日（808年11月10日）から、正式に位禄に切り替えられました。

支給額の変遷

大宝元年（701年）に施行された大宝律令によって、五位の支給額は増額されましたが、大同3年11月10日（808年11月30日）にこれが元に戻されるなど、支給額は変動しました。また、女性の場合、妃・夫人・嬪を除いて既定の半分が支給されることになり、外位に対する支給も神亀5年3月28日（728年5月11日）において同様の措置が取られました。

死亡時の支給

支給対象者が死亡した場合、その年の位禄は全額支給されるというルールも存在しました。位禄は位階に基づいて支給されるため、散位がある官人でも支給の対象となりました。しかし、公的行事に正当な理由なく2年以上参加しない場合、支給が停止されることもありました。

季禄との違い

同様の仕組みとして季禄がありますが、こちらは職事官のみを支給対象としている点が位禄とは異なります。ただし、広義には季禄も位禄に含むことが考慮されます。

現代への影響

位禄制度は後に庸や調の未進によって、現地の年料別納租穀（納められた穀米）を支給する方針に変更されました。10世紀に入ると、この支給も困難になり、位禄定（いろくさだめ）と呼ばれる制度によって、一部の官職にのみ支給されるようになりました。このように、位禄は日本の律令制度の中で、官人の権限や生活に密接に関係した重要なシステムであり、その後の官制にも影響を与え続けました。

参考文献

• - 高橋崇「位禄」『国史大辞典 1』（吉川弘文館 1979年）
• - 鬼頭清明「位禄」『日本史大事典 1』（平凡社 1992年）
• - 村尾次郎「位禄」『平安時代史事典』（角川書店 1994年）
• - 俣野好治「位禄」『日本歴史大事典 1』（小学館 2000年）

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