住吉神社 (東京都中央区)

東京都中央区佃の住吉神社：歴史と伝統、そして信仰の灯

東京都中央区佃にある住吉神社は、古くからの歴史と、徳川家康との深い関わりを持つ神社です。その歴史は、豊臣秀吉の時代、家康が上洛した際に、佃村と大和田村の漁民が家康一行を神崎川で船で運び、白魚などを献上したことに始まります。この出来事を機に、両村の漁民は家康から厚い信頼を得て、西国海上隠密の任に就いたり、大坂の陣では軍船や食料の調達に貢献するなどしました。家康は、その功績を称え、両村の漁民に全国での漁業権を与えたと伝えられています。

その後、家康が関東に移ると、佃村と大和田村の漁民33名と神主が江戸に移住し、現在の佃島を築きました。正保3年（1646年）、彼らは故郷の摂津国佃村の住吉神社（現・田蓑神社）の分霊である住吉三神（底筒男命、中筒男命、表筒男命）を祀り、さらに神功皇后と徳川家康の霊を合祀して、住吉神社を創建しました。この創建は、家康と佃の漁民たちの深い絆を示す出来事と言えるでしょう。

住吉神社は、創建以来、幾多の困難を経験してきました。度重なる火災や風災に見舞われながらも、氏子たちの強い信仰心と結束によって、現在までその歴史を繋いできました。明治時代には、月島、新佃島、晴海、豊海の埋め立てが進み、それらの地域も氏子地域に編入されました。

神社の例大祭は、3年に一度行われる神幸祭が最も重要な行事です。かつては、神輿の海中渡御や船渡御が行われていましたが、東京湾の汚染が深刻化した昭和37年（1962年）に廃止されました。しかし、水質が改善された平成2年（1990年）、28年ぶりに船渡御が復活し、現在も盛大に行われています。

住吉神社の神輿は、関東では珍しい八角形で、「八角神輿」と呼ばれ、例祭では高さ20メートルにも及ぶ6本の大幟が立てられます。その壮観さは、江戸城からも見えるほどだったと言われています。また、例祭には、獅子頭宮出しや宮神輿宮出しなど、伝統的な神事が行われます。

境内には、多くの文化財が保存されています。中央区指定有形文化財である水盤舎、陶製住吉神社扁額、板絵着色蘭陵王図額、木板金地着色蘆鷺図額、住吉神社文書などが、神社の歴史と文化を物語っています。また、植樹の碑や五世川柳句碑なども、訪れる人々の心を捉えます。

住吉神社は、単なる神社という枠を超え、佃島の歴史と文化、そして人々の信仰を象徴する存在です。その歴史と伝統は、これからも地域住民に受け継がれ、未来へと続いていくことでしょう。 境内には、竜神社、疫神社、疱瘡神社、船魂神社、入船神社、稲荷社といった摂社も祀られています。御旅所は勝どき四丁目に、分社は江東区牡丹町と晴海にあります。境内の鳥居に飾られている陶製の扁額は、有栖川宮幟仁親王の筆によるものです。

小説家丸谷才一の短編小説『鈍感な青年』では、住吉神社の3年に一度の例祭以外の年の「かげまつり」の様子が描かれており、作品にもその存在感が示されています。

もう一度検索