佐久間実勝

佐久間実勝は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した、名高い茶人と旗本です。佐久間将監の名でも知られています。諱は真勝あるいは直勝と記されています。

彼は茶道宗可流の開祖として知られ、茶の湯の世界に大きな足跡を残しました。豊臣秀吉の小姓として仕えた後、徳川家康、秀忠、家光と、徳川家三代にわたって仕えるという、輝かしい経歴を持っています。慶長9年（1608年）には従五位下伊予守に叙任されています。

その才能は茶の湯のみに留まりません。慶長14年（1609年）には、名古屋城の築城普請奉行を務めるなど、政治面でも重要な役割を担っていました。その後、使番に列し、寛永9年（1632年）には作事奉行に任命され、翌年には2000石の知行を賜っています。

実勝の茶の湯への造詣は深く、古田織部や小堀遠州といった当時を代表する茶人たちから師事し、その技を磨きました。山隠宗可、または匿藪斎という号を用いていました。晩年、彼は京の大徳寺龍光院内に塔頭寸松庵を建立し、隠居生活を送りました。

寸松庵は、前庭一面に小松を植えていたことからその名が付けられました。この庵で、実勝は最も大切なコレクションとして、伝紀貫之筆とされる12枚の色紙を愛蔵していました。これは後に『寸松庵色紙』として知られるようになり、平安時代を代表する名品として、現在も高い評価を受けています。

この色紙は、元々は和泉国南宗寺にありましたが、実勝が烏丸光広から入手しました。彼は一枚一枚の色紙に、歌意を描いた金地扇面画を添え、豪華な帖として仕立て上げました。さらに、彼は堀田正吉の娘を妻としていた喜多見重勝に茶道を指南するなど、後進の育成にも力を注いでいました。

実勝の卓越した才能は、茶の湯のみにとどまりません。現在、神奈川県横浜市中区の三渓園に移設されている聴秋閣は、元和9年（1623年）、徳川家光が上洛する際に、実勝の命によって二条城内に建造されたものです。その後、移設や改装が加えられていますが、その歴史的価値は変わりません。

実勝の妻の実家である堀田氏との関係を通して、春日局とも繋がりがあったと推測されています。聴秋閣は後に春日局に払い下げられ、江戸に移設された後、春日局の実家である稲葉家の藩邸に移設され、幕末までその歴史を繋いできました。

佐久間実勝は、茶人としての高い技量、そして徳川三代に仕えた政治家としての経験、そして歴史的建造物である聴秋閣との関わりなど、様々な側面から、江戸時代初期の歴史に大きな足跡を残した人物と言えるでしょう。彼の生涯は、日本の文化と歴史を深く理解する上で、貴重な知見を与えてくれます。

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