佐久間軍記

『佐久間軍記』は、戦国時代から江戸時代初期にかけて成立した佐久間氏の軍記物です。著者は佐久間常関（または常閑）とされていますが、詳しい出自は不明です。本書は、佐久間氏の興りから大坂の陣に至るまでの歴史を、佐久間盛重、佐久間信盛、佐久間盛次の四人の子（盛政、安政、勝政、勝之）を中心に描いています。

本書の内容は、天文18年（1549年）の織田信長の家督相続から始まり、佐久間氏の武功が詳細に記録されています。特に、織田信長に仕えた佐久間盛重や佐久間信盛の活躍、そして佐久間盛次の四人の息子たちの事績に重点が置かれています。しかし、『佐久間軍記』には史実とは異なる記述も含まれており、史料としての信頼性には注意が必要です。

本書の「序」には、佐久間氏と柴田氏の武功が信長記に十分に記録されていないことへの遺憾の意が述べられています。著者は、古老から話を聞き取り、将来への備えとして本書を編纂したと記しています。

『佐久間軍記』には、以下のような注目すべき記述が含まれています。

佐久間盛重が強力（ごうりき）で大酒飲みであったという記述。
佐久間信盛の追放劇に、誰かの讒言があった可能性を示唆する記述。
佐久間兄弟の初陣の年齢が非常に若い（盛政14歳、安政15歳、勝政14歳、勝之13歳）という記述。
荒山合戦の時期に関する誤り。
本能寺の変後、毛利氏が織田信長の死を知った上で、羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）に恩を売るために講和に応じたとする記述（『太閤記』にも同様の記述あり）。
本能寺の変後、徳川家康が「神君伊賀越え」で三河へ逃れる際、佐久間勝之が伊勢まで同行し、家康が勝之に恩義を感じたとする記述。
* 安政と勝之の兄弟が蒲生氏郷に従って奥州にいた際、伊達政宗が氏郷を暗殺しようとしたところ、勝之がこれを見破って氏郷を救ったという記述。

これらの記述は、他の史料では確認できないものも多く、興味深い内容となっています。

『佐久間軍記』は、『続群書類従』や『史籍集覧』に所収されており、近藤瓶城によって編纂されたものが国立国会図書館デジタルコレクションで公開されています。

本書は、佐久間氏の研究における貴重な資料であると同時に、戦国時代の武将たちの生き様を知る上で興味深い読み物と言えるでしょう。ただし、史実との異同に注意しながら読む必要があります。

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