佐伯啓思

佐伯啓思について

佐伯啓思（さえき けいし）は1949年12月31日に奈良県奈良市で生まれた日本の経済学者であり、思想家である。京都大学の名誉教授であり、こころの未来研究センターの特任教授を務め、過去には滋賀大学教授や京都大学教授なども歴任している。彼の学問的な関心は、共生文明学、現代文明論、及び現代社会論などの分野であり、特に国際的な文明論に深く関わっている。また、彼は文部科学省中央教育審議会の委員を務めた実績もある。

来歴

佐伯は教育学者である父、佐伯正一の子として育ち、1972年には東京大学経済学部を卒業。その後、1979年には同大学院の博士課程に進み、西部邁や村上泰亮の指導の下で社会経済学や社会思想史を専門に学ぶ。1979年に広島修道大学の商学部に講師として赴任後、1981年には滋賀大学経済学部に助教授として迎えられ、その後教授に昇進した。1993年からは京都大学総合人間学部の教授として教育に携わり、1997年には大学院人間・環境学研究科の教授に就任した。2015年に定年退職し名誉教授となった後も、特任教授として活動を続けている。

佐伯はまた、表現者顧問や京の発言主幹としても活躍しており、朝日新聞で「異論のススメ」というコラムを2015年から2019年まで連載した。その後は四半期に一度の特集版を執筆している。2019年には自ら監修・編集を行った総合文藝誌『ひらく』を創刊し、現在も同誌の発刊を続けている。また、2021年9月からは論壇チャンネル「ことのは」で自身の講義を配信している。

研究内容

初期の頃、佐伯はアダム・スミスやジョン・メイナード・ケインズといった経済思想史や社会思想史に焦点を当てて研究を進めた。その後、彼の関心はより広範なテーマである文明論や日本思想史に移り、特に東洋や日本の「無」の思想の意義を探究している。小林秀雄や保田與重郎の思想、西田幾多郎の哲学、さらには西谷啓治による近代の超克に関する研究を通じて、ニヒリズムの克服を目指している。彼は、現代の高度に技術化された社会における人間の存在意義を問うことに関心を寄せており、著作活動や講演を通じて、哲学的および社会的な問題提起を行っている。

受賞歴

佐伯の業績は多くの賞で評価されており、1985年には『隠された思考』でサントリー学芸賞を受賞。1994年には『「アメリカニズム」の終焉』が第10回NIRA政策研究・東畑記念賞を受賞し、1997年には『現代日本のリベラリズム』で第7回読売論壇賞を得た。また、2007年には第23回正論大賞も受賞するなど、多くの業績が広く認識されている。

主な著作

佐伯の著作には、1985年に発表された『隠された思考』をはじめ、多数の著作がある。『現代日本のリベラリズム』や『産業文明とポスト・モダン』といったタイトルは、彼の思想を知る上で重要な文献であり、特にこれらの作品は現代日本における社会的、経済的な問題への洞察が示されている。彼の著作は単に学術的な価値があるだけでなく、一般読者に向けた能力や視点を提供しており、現代の日本における様々な議論に貢献する役割を果たしている。研究者や学生のみならず、広く一般の人々にも影響を与えている。

自身の研究を通じ、彼は現代社会が直面する様々な課題について深い考察を提供し続けている。

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