経済思想史

経済思想史について

経済思想史とは、経済現象を理解するための思想やその歴史を研究する学問分野です。この分野は、経済学の発展とともに重要性を増し、さまざまな視点からアプローチされています。日本では「経済学史」という用語も用いられていますが、基本的には同じ視点から経済思想を探るものです。

経済思想の位置づけ

経済思想は、その時代における社会の価値観や倫理観を反映しており、重商主義や重農主義といった流派が歴史の中で顕著に現れています。特に、古典派以降の経済学は、倫理学から分化したとわれています。このため、経済思想史は哲学や倫理学と密接に関連しています。

主要な経済思想

経済思想史では、様々な時代や地域での重要な経済的考え方が取り上げられています。以下では、主なトピックを年代順に紹介します。

古典派以前の西欧

• - スコラ学: 中世の学問体系の中で道徳や神学と結びついた経済思想。
• - サラマンカ学派の経済論: スペインの大学における初期の経済論。
• - 重商主義: 国家の富を重視し、貿易の黒字を追求する思想。
• - 重金主義: 金や銀などの貴金属の蓄積を重視した考え方。
• - グレシャムの法則: 悪貨が良貨を駆逐するという経済的原則。
• - 貿易差額主義: 貿易において得られる収支の差異に焦点を当てる考え方。
• - コルベルティスム: フランスのコルベールによる市場の保護主義。
• - 政治算術: 経済データを使用して政策を分析する考え方。
• - カメラリスト思想: ドイツの官房学派が提唱した行政と経済の関係。
• - 重農主義: 農業を基盤とした経済の道徳的価値を重視する思想。

古典派以降の西欧

• - 古典派経済学: アダム・スミスを含む学派が経済自由主義を主張。
• - イギリス古典学派: リカードやマルサスに代表される思想。
• - ドイツ歴史学派: 歴史的過程を重視して経済を分析。
• - マルクス経済学: 資本主義批判を軸とした思想。
• - 限界効用学派: 消費者の効用に基づいて経済行動を分析。
• - オーストリア学派: 市場経済の自由を強調。
• - ケインズ経済学: 景気循環と政府の役割を重視。
• - 新古典派経済学: 市場の調整メカニズムを分析する考え方。
• - 進化経済学やゲーム理論など、現代における新しい経済思想も数多く存在します。

非ヨーロッパ圏の経済思想

• - 諸子百家の農家の思想や古農書の思想、経世致用の学など、アジアにおける経済的な考察も重要です。

近代以降の経済思想

日本においては、滝本誠一や渋沢栄一のような思想家が重要な役割を果たし、農本主義や広域圏思想といった独自の経済観も発展してきました。このように、経済思想史は単なる歴史的事象を超え、現代の経済政策や学問の基礎を形成する重要な要素となっています。

文献

この分野について詳しく知るためには、八木紀一郎の著作『経済学入門シリーズ 経済思想』（第2版、日経文庫 2011年）を参考にすることが推奨されます。

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