佐伯秀男

佐伯秀男：多才な昭和のエンターテイナー

佐伯秀男（1912年1月9日 - 2003年11月1日）は、俳優、ファッションモデル、ボディビルダーとして多彩な才能を発揮した人物です。本名を鬼武秀治といい、一時期は三原秀夫と名乗っていました。佐伯泰輔という別名も持っています。

生い立ちと初期のキャリア

東京府東京市赤坂区表町（現在の東京都港区赤坂）で、軍人の父のもとに生まれました。青山学院中等部を経て明治大学に進学しますが、中退。1932年に築地座に入団し、新劇俳優としての道を歩み始めます。

1934年には、PCL映画製作所（後の東宝）に入社し、映画界へ。当初から二枚目俳優として注目され、数々の作品で主演を務めました。成瀬巳喜男監督の『君と行く路』や『雪崩』などに出演し、人気を博します。また、霧立のぼるとの共演が多く、二人は後に結婚しています。

戦中・戦後の活動

戦時中は、映画製作が統制される中で、大映へ移籍。1942年に結婚した霧立のぼるとは1944年に離婚しています。戦後、松竹下加茂撮影所と契約し、溝口健二監督の『女優須磨子の恋』などに出演しました。

1949年以降はフリーランスとなり、1950年代には東宝や新東宝と契約。しかし、次第に脇役や端役が多くなっていきます。

成人映画への出演とボディビルへの挑戦

1960年代に入ると、佐伯は独立系の成人映画にも出演するようになります。一般映画での活躍が難しくなる中、新たな活路を見出したと言えるでしょう。田中純一郎の『日本映画発達史』では、黎明期の成人映画界の主要な出演者の一人として、佐伯の名前が挙げられています。

1968年、佐伯はボディビルディングを始めます。1971年には再婚し、軽食店を経営しながら、シニアのファッションモデルとしても活動しました。そして、ボディビルも継続し、高齢になってもその肉体美を維持し続けました。

晩年と死

1991年には、東京ボディビル選手権大会マスターズの部で特別賞を受賞。「現役最高齢のファッションモデル」「現役最高齢のボディビルダー」として、最晩年まで活動を続けました。

2003年11月1日、胃がんのため91歳で死去。没後、妻の監修により著作物をまとめた『追悼 映画俳優佐伯秀男 あるがままに輝きて』が出版されました。

佐伯秀男は、俳優としてだけでなく、モデル、ボディビルダーとしても時代を駆け抜けた、まさに多才なエンターテイナーでした。彼の生涯は、常に新しいことに挑戦し続けた、不屈の精神の証と言えるでしょう。

もう一度検索