何喬遠

何喬遠（か きょうえん）は、明代後期の官僚であり、著名な学者でもありました。字は穉孝（ちこう）、号は匪莪（ひが）と称しました。泉州府晋江県を本貫とし、嘉靖37年（1558年）に誕生し、崇禎4年（1632年）に74歳で生涯を閉じました。

官僚としての歩み

何喬遠は、何炯（か けい）の子として生まれ、万暦14年（1586年）に進士に及第し、官界に入りました。刑部主事としてキャリアをスタートさせ、その後礼部儀制郎中に転じました。万暦帝が皇長子朱常洛（しゅ じょうらく）を王に封じようとした際、何喬遠は嫡長子を皇太子とすべきと主張し、皇帝と対立しました。この一件で、同僚たちが左遷されると、彼は左遷に反対する上奏を行い、彼らを救済しようとしました。

外交問題への関与

豊臣秀吉による朝鮮侵攻（文禄の役）が発生すると、明朝は朝鮮への援軍を派遣しました。しかし、朝廷内では石星（せきせい）が秀吉を日本国王として封じ、日明間の貿易を再開しようとする動きがありました。これに対し、朝鮮使臣の金睟（きんすい）は、李如松（り じょしょう）と沈惟敬（しん いけい）が虚偽の報告をしていると訴えました。何喬遠は石星の主張に反対する上奏を行い、万暦帝も一時は心を動かされました。しかし、石星が自説を曲げなかったため、何喬遠の上奏は受け入れられず、彼は広西布政司経歴に左遷され、故郷に戻ることとなりました。

学者としての活動と晩年

故郷に戻ってからの20年余りの間、何喬遠は学問に専念し、著述活動に励みました。その学識の高さから「鏡山先生」と称されるようになりました。推薦の声も多くありましたが、中央での役職に復帰することはありませんでした。

泰昌元年（1620年）、何喬遠は北京に召還され、光禄寺少卿として官界に復帰しました。その後、太僕寺少卿に転じました。王化貞（おう かてい）が広寧に兵を駐屯させ、主戦論を唱えましたが、何喬遠は軽率な行動を戒め、防御策を提案しました。しかし、彼の意見は聞き入れられず、王化貞は広寧を放棄して逃走してしまいました。天啓2年（1622年）、何喬遠は左通政に昇進しました。鄒元標（すう げんひょう）が首善書院を創設した際、朱童蒙（しゅ どうもう）らがこれを批判しましたが、何喬遠は書院の梁に掲げられた文は自身が書いたものであると主張し、共に処罰されるべきだと述べました。その後、光禄寺卿、通政使と昇進しましたが、病を理由に戸部右侍郎を辞任しました。崇禎2年（1629年）、南京工部右侍郎として再び官界に復帰しましたが、給事中の盧兆龍（ろ ちょうりゅう）に衰えを指摘されたため、自ら退官しました。崇禎4年（1632年）に亡くなり、工部尚書の位が追贈されました。

著述活動

何喬遠は、学者としても多くの著書を残しており、『名山蔵』（37巻）、『閩書』（154巻）、『明文徴』（74巻）、『何喬遠集』（80巻）などが刊行され、広く読まれました。

家族

何喬遠には、以下の子供たちがいました。

何九転（早逝、妻の王氏は夫の死後、自殺）
何九雲（字は舅悌）
何九説（字は兄悌）

参考文献

『明史』巻242 列伝第130
『罪惟録』列伝巻之18
李清馥『閩中理学淵源考』巻75

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