余戸

余戸（あまりべ/あまるべ）とは

古代日本の律令制における地方行政組織の一つ、余戸（あまりべ・あまるべ）は、特に里（郷）と呼ばれる行政単位に関連して存在しました。この組織は、国・郡・里という三つの行政区画の中で、50戸ごとに編成されている里（郷）の中で、定められた戸数に満たない集落に与えられた名称です。

余戸の成り立ち

余戸は、律令によって整然とした地方行政を行うための一部として機能しました。具体的には、50戸に満たない集落が余戸として認識され、保長と呼ばれる監督者がこれらの集落を管理しました。この余戸の起源については、二つの見解が存在します。1つは、里（郷）の編成時に余った戸数を基に設立されたというもので、もう1つは、山間部のような地理的条件から里（郷）を編成することが困難な地域に設置されたというものです。ただし、歴史的な記録においてこの組織の成立について明確な記載がないため、どちらの見方も根拠を持ちつつも確定的ではありません。

余戸から里（郷）への昇格

余戸に属する集落が時間と共に戸数を増やし、最終的に50戸に達した場合、これらの集落は里（郷）に昇格する可能性がありました。昇格した際には、地元の歴史や文化に基づいた地名が、新しい里（郷）の名称として採用されました。このプロセスは、地域の歴史的背景を反映する重要な要素であり、余戸自体が地名として定着し、各地に「余戸里（郷）」といった名称が存在するようになりました。

実例

「出雲国風土記」では、特に意宇郡や島根郡、楯縫郡、神門郡の4つの郡において「余戸の里」という名称が見受けられます。その中の一つは後に里（郷）として昇格し、地域社会において重要な役割を果たしました。このように、余戸という制度は地域の地理や文化と密接に関わりながら発展し、多様な地域名が生まれるきっかけとなりました。

余戸に関連する資料

日本の歴史における余戸については、いくつかの資料が存在しています。杉本一樹による『日本歴史大事典』や、鎌田元一の『日本史大事典』における情報は、この制度の理解に役立つでしょう。また、『岩波日本史辞典』や『出雲国風土記』の全訳注も、余戸を深く知るための参考資料として重要です。

現在の余戸

現代においても、余戸に由来する名称は日本各地で見られ、地域の歴史的な記憶として息づいています。たとえば、宮城郡の余戸郷や、兵庫県に存在する余部村など、様々な地名にその影響が残っています。

このように、余戸は古代日本の社会構造において重要な役割を果たしただけでなく、時を経て今も地域社会の中で形を変えて存在し続けています。

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