意宇郡

意宇郡（おうぐん）とは

意宇郡は、かつて出雲国（現在の島根県）に存在した郡です。その領域は、現在の松江市の一部（大橋川以南および大根島・江島）と安来市の一部（西荒島町）にあたります。古代から重要な地域であり、その歴史は『出雲国風土記』にも記されています。

郡域

1879年（明治12年）に行政区画として発足した当時の郡域は以下の地域にあたります。

松江市の一部（大橋川以南および大根島・江島）
安来市の一部（西荒島町）

歴史

古代

意宇郡は、大化から天武天皇期にかけて順次設置されたとされる八神郡の一つです。律令制の施行により制定されたと考えられています。

『出雲国風土記』によると、郡名の由来は「八束水臣津野命（やつかみずおみつぬのみこと）」が国引きの大事業を終えた際に「国引きを意恵（おえ、終わるの意味）」と言ったことから、「意恵郡」が後に「意宇郡」となったと伝えられています。

熊野坐神社（熊野大社）の所在地として重視され、文武天皇2年（698年）には近親者の連任を許す詔が下されました。通常、郡司（評司）への近親者の連続任命は禁止されていましたが、意宇郡では神社を代々祀ってきた出雲氏が特別視されていたことが伺えます。

郡家は山代郷に置かれていました。

郷里

天平5年（733年）に成立したとされる『出雲国風土記』には、11の郷と33の里、1つの餘戸里、3つの駅家、3つの神戸が記されています。各郷にはそれぞれ3つの里がありました。

1. 母理郷 – 文理郷から神亀3年（726年）に改名。現在の安来市伯太町の北部を除く地域。
2. 屋代郷 – 現在の安来市伯太町安田山形、吉佐町、門生町辺り。
3. 楯縫郷 – 現在の安来市宇賀荘町、清瀬町、清井町、九重町、清水町、早田町辺り。
4. 安来郷 – 現在の安来市安来町、宮内町、南十神町、黒井田町、島田町辺り。
5. 山國郷 – 現在の安来市上吉田町、下吉田町、鳥木町、柿谷町、折坂町、沢町辺り。
6. 飯梨郷 – 飯成郷から神亀3年（726年）に改名。現在の安来市飯梨町、利弘町、飯生町、実松町辺りと広瀬町のほぼ全域。
7. 舎人郷 – 現在の安来市中心部辺り。
8. 大草郷 – 現在の松江市大庭町、佐草町、日吉町辺り。
9. 山代郷 – 現在の松江市南東部辺り。
10. 拝志郷 – 林郷から神亀3年（726年）に改名。現在の松江市玉湯町林、玉湯町大谷、宍道町上来待辺り。
11. 宍道郷 – 現在の松江市宍道町の大部分。
12. 餘戸里 – 現在の松江市東出雲町の大半。

駅家と神戸

野城驛
黒田驛
宍道驛
出雲神戸 – 現在の松江市八雲町辺り。
賀茂神戸 – 現在の安来市中央付近。
忌部神戸 – 現在の松江市玉湯町の大部分。

式内社

『延喜式』神名帳に記される郡内の式内社が存在します。

近代以降の沿革

明治初期

「旧高旧領取調帳データベース」によると、明治初年時点での支配は1町48村1浦でした。

廃[[藩置県]]と府県統合

1871年（明治4年）7月14日：廃[[藩置県]]により松江県、広瀬県の管轄となる。
1871年（明治4年）11月15日：第一次府県統合により、全域が島根県の管轄となる。

行政区画の変更

1875年（明治8年）9月5日：面白村が湯町村に合併。（47村1浦）
1879年（明治12年）1月12日：郡区町村編制法の島根県での施行により行政区画としての意宇郡が発足。「島根秋鹿意宇郡役所」が島根郡松江城下に設置され、同郡および秋鹿郡とともに管轄。

町村制施行

1889年（明治22年）4月1日、町村制の施行により以下の各村が発足しました。（16村）

竹矢村 ← 矢田村、八幡村、馬潟村、竹矢村
出雲郷村 ← 出雲郷村、春日村
揖屋村（単独村制）
意東村 ← 上意東村、下意東村
岩坂村 ← 西岩坂村、東岩坂村、日吉村
熊野村（単独村制）
大庭村 ← 大庭村、佐草村、山代村、大草村、平原村
津田村 ← 西津田村、東津田村、古志原村、松江分
乃木村 ← 松江分、乃木村、福富村、乃白村
忌部村 ← 東忌部村、西忌部村
玉造村 ← 大谷村、玉造村
湯町村 ← 湯町、湯町村、布志名村、林村
来海村 ← 上来海村、東来海村、西来海村
宍道村 ← 白石村、宍道町、宍道村、佐々布村、伊志見村
波入村 ← 入江村、波入浦、遅江村
二子村 ← 二子村、寺津村、亀尻村、馬渡村、江島村

また、市制施行により松江城下町などが松江市として発足し、郡から離脱しました。

来待村への改称

1893年（明治26年）7月9日：来海村が改称して来待村となる。

郡制施行と意宇郡の廃止

1896年（明治29年）4月1日：郡制の施行のため、「島根秋鹿意宇郡役所」の管轄地域をもって八束郡が発足。同日、意宇郡は廃止されました。

意宇六社

意宇郡には、特に以下の六社が「意宇六社」として崇敬されています。これらの神社を巡拝する「六社参り」は、江戸時代以前から行われています。

1. 熊野大社（松江市八雲町）
2. 真名井神社（松江市山代町）
3. 揖夜神社（松江市東出雲町）
4. 六所神社（松江市大草町）
5. 八重垣神社（松江市佐草町）
6. 神魂神社（松江市大庭町）

まとめ

意宇郡は、古代から現代に至るまで、その歴史と文化が受け継がれてきた地域です。その変遷を辿ることで、古代の出雲国の様子や、近代の行政区画の変遷を知ることができます。また、意宇六社に代表されるように、地域の文化や信仰を理解する上でも重要な地域です。

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