依存性パーソナリティ障害

依存性パーソナリティ障害 (Dependent Personality Disorder: DPD)



依存性パーソナリティ障害(DPD)は、精神医学的な障害の一つで、他者への過度な心理的依存が特徴です。何事も自分一人ではできないと感じる、広範で持続的な行動様式を示すパーソナリティ障害です。

定義



DPDは、日常生活における決断から重要な判断まで、あらゆる場面で他者の助けや指示を必要とする状態です。見捨てられることへの強い不安感から、他者に依存し、相手に不快な思いをさせてまで、その関係を維持しようとします。

診断基準



診断は、精神医学的な診断基準に基づいて行われます。代表的な診断基準として、DSM-IV-TRとICD-10があります。

DSM-IV-TR



DSM-IV-TRでは、以下の特徴が挙げられています。

他者からの過剰なアドバイスや指示がないと、日常的な意思決定ができない。
自分の人生における重要な責任を他者に委ねる。
他者からの支持や承認を失うことを恐れ、反対意見を表明できない(現実的な評価を超えた恐れ)。
自分から物事を始めたり、実行したりすることが苦手(自信のなさからくる)。
他者からの保護や支援を得るために、不快なことや屈辱的なことまで受け入れてしまう。
自分一人では生きていけないという過度な恐怖感や無力感を抱く。
親密な関係が終わると、すぐに次の保護者を求めてしまう。
見捨てられることへの非現実的な恐怖にとらわれている。

これらの特徴が成人期早期までに明らかになり、薬物や一時的なストレスによるものではなく、臨床的に著しい苦痛や機能障害を引き起こしている場合に、DPDと診断されます。

ICD-10



ICD-10では、診断コードF60.7が付与されます。ICD-10においても、他のパーソナリティ障害と同様に、パーソナリティ障害の全般的診断ガイドラインを満たす必要があります。

鑑別診断



DPDと類似した特徴を持つ他の精神疾患との鑑別が重要です。

境界性パーソナリティ障害 (BPD):見捨てられ不安による対人依存という点で類似しますが、DPDほど対人関係は不安定にならず、自己破壊的な行動も少ない傾向があります。
演技性パーソナリティ障害 (HPD):他人からの注目を求める点は似ていますが、DPDには大げさな振る舞いや虚言癖は見られません。また、HPDの方が自己評価が高い傾向があります。
分離不安障害:愛着のある人物から離れることを極度に嫌がる点は似ていますが、DPDが依存対象を失った場合に別の人物を探すのに対し、分離不安障害では特定の人物への執着が強いです。

記憶を助けるゴロ合わせ



DPD(依存)という言葉の頭文字を使ったゴロ合わせは、診断基準の理解に役立ちます。

D - Difficulty making everyday decisions (日常的な決断が難しい)
E - Excessive lengths to obtain nurturance and support from others (他者からの養育や支援を得るために過度な努力をする)
P - Preoccupied with fears of being left to take care of self (自分一人で生きていくことへの恐れにとらわれている)
E - Exaggerated fears of being unable to care for himself or herself (自分自身の世話ができないという過度な恐怖)
N - Needs others to assume responsibility for his or her life (自分の人生における責任を他者に委ねる必要がある)
D - Difficulty expressing disagreement with others (他者と意見が異なることを表現するのが難しい)
E - End of a close relationship is the beginning of another relationship (親密な関係が終わると、すぐに次の関係を求める)
N - Noticeable difficulties in initiating projects or doing things on his or her own (自分から何かを始めたり、行ったりすることに著しい困難がある)
T - "Take care of me" is his or her motto (「私を世話して」がモットー)

参考文献



アメリカ精神医学会、(翻訳)高橋三郎・大野裕・染矢俊幸『DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』(新訂版)医学書院、2004年。ISBN 978-0890420256。

関連項目



パーソナリティ障害
ストックホルム症候群
共依存
個人の境界線
パーソナルスペース
ミラーニューロン
ヘリコプターペアレント

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