依田郁子

依田郁子の陸上競技と人生の軌跡

依田郁子（よだ いくこ）は、1938年に長野県小県郡丸子町（現・上田市）で生まれました。短距離走とハードル競技を専門とする日本の陸上選手で、1964年の東京オリンピックの女子80mハードルで5位入賞を果たし、当時の女子陸上界での重要な存在となりました。

幼少期と高校時代

幼少期には健康上の問題があり、中学3年生の頃には肋膜炎と肺炎にかかり、希望していた高校の選抜試験に失敗。しかし、1955年に再挑戦し成功し、長野県上田染谷丘高等学校に入学しました。当初は強豪バスケットボール部からの勧誘を受けましたが、依田は個人競技の陸上に魅力を感じ、陸上部に加入しました。

高校1年生の時に全国高校陸上大会の200mに出場し、次第に陸上に情熱を注ぐようになりました。その冬、指導教員からハードル競技への転向を指示され、依田は80mハードルに挑戦。これが成功を収め、2年生からは全国高校陸上大会で2年連続優勝を果たし、その才能が広く認識されることとなりました。

リッカーミシンへの入社とオリンピック出場

高校卒業後、依田はリッカーミシンに入社し、往年の名スプリンターである吉岡隆徳から指導を受けました。しかし、1960年ローマオリンピックの選考には漏れてしまい、その精神的影響から一時は自殺を試みるも未遂に終わりました。

それ以降も依田は力をつけ、女子80mハードルの日本記録を何度も更新。1964年の東京オリンピックでは、日本代表として出場し、歴史的な5位入賞を達成しました。これは日本の女子短距離競技において特筆すべき瞬間でした。このオリンピックにおいて、女子陸上選手としての活躍は依田以外には無く、彼女の名は日本陸上界に刻まれました。

引退後と不幸な死

オリンピック後、依田は現役を引退し、1965年に宮丸凱史と結婚しました。結婚生活の中でも、教育委員や後進指導者として活躍し、特に東京女子体育大学での指導に情熱を注ぎました。しかし、1983年に突然自らの命を絶つ選択をしました。死亡時には45歳。自殺の理由は遺書が残されていないため謎に包まれています。

依田は1983年の5月に膝の手術を受け、麻酔の影響で手術が途中で中断。退院後も普通の生活を営んでいたと言われていますが、心の内に抱えた苦しみは誰にも知られることはありませんでした。

性格と奇行

彼女は非常に真面目で几帳面な性格でしたが、その真面目さが時に悪影響を及ぼすこともあったとも言われています。また、依田にはスタート前に行う独特の儀式があり、これらは他人から見ると奇行とも思われました。サロメチールを塗ったり、唾を手に吐いたり、さらには後転倒立を行ったりすることは、彼女の集中力を高めるためのものでした。

彼女の生涯は短く、様々な困難と向き合いながらも、陸上競技への情熱を持ち続けた選手として、今も多くの人々に影響を与えています。

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