藤原成親

藤原成親：栄華と没落の生涯

藤原成親は、平安時代末期に活躍した公卿です。中納言藤原家成の子として生まれ、正二位権大納言にまで上り詰めました。その生涯は、権力闘争と複雑な人間関係、そして歴史の大きなうねりに翻弄された波乱に満ちたものでした。

早い昇進と鳥羽法皇の寵臣

成親の父・家成は鳥羽法皇の寵臣であったことから、成親自身も幼い頃から順調に昇進していきました。5歳で従五位下に叙せられ、7歳で越後守に任命されるなど、そのスピードは異例です。その後も讃岐守、侍従などを歴任し、鳥羽法皇の側近として重用されました。保元元年（1156年）には、わずか19歳で左近衛少将に任じられます。この役職は本来、上流貴族のみに許されたものであり、成親の昇進は、家成一族の台頭と、鳥羽法皇からの厚い信頼の証といえるでしょう。鳥羽法皇の崩御の際にも、成親は重要な役割を担っています。

後白河法皇への忠誠と平氏との複雑な関係

鳥羽法皇の死後、成親は後白河法皇の側近となりました。後白河法皇からの信頼は厚く、親密な関係にあったと伝えられています。平治の乱では、藤原信頼と共に武力をもって参戦しますが、敗北後、信頼は処刑されるも、成親は妹が平重盛の妻であった縁で助命され、解官で済みました。

その後、成親は後白河法皇の院政強化のため、政治の中枢で活躍します。蔵人頭、参議に任じられ、わずか29歳で正三位に叙せられるなど、出世はめざましく、権中納言にも昇進します。平重盛とは義兄・義弟の関係にあり、親密な関係を築き、娘は重盛の嫡男・維盛と結婚しています。

嘉応の強訴と政治的綱渡り

しかし、成親の政治的立場は不安定でした。嘉応の強訴では、延暦寺の強訴を受け、一時的に配流されるも、すぐに召還され、権中納言に復職しています。この事件は、後白河法皇と延暦寺、そして平氏との複雑な力関係を浮き彫りにするものです。成親は、この危機を巧みに乗り越え、後白河法皇からの信頼を再確認しました。その後も、検非違使別当など要職を歴任し、後白河法皇の信任を一身に集め、院政の中枢を担いました。

鹿ケ谷の陰謀と最期

安元3年（1177年）4月、白山事件をきっかけに、後白河法皇と平氏との対立が激化します。6月1日、成親は平清盛によって突然逮捕され、鹿ケ谷の陰謀に関与したとして、備前国に配流、解官されました。歴史書には、成親が平氏打倒の陰謀に加わっていたと記されていますが、その真偽は不明です。配流先の備前国で、成親は食事を与えられずに殺害されたと伝えられています。

成親が残したもの

藤原成親の生涯は、平安時代末期の激動期を反映したものです。権力者への忠誠、平氏との複雑な関係、政治的駆け引き、そして陰謀。栄華を極めた一方で、常に政治的リスクに晒され、最後は悲劇的な最期を迎えることになりました。その生涯は、平安時代末期の権力闘争と、時代の変化の激しさを物語る貴重な資料となっています。彼の子孫は、その後も朝廷や社会の中枢で活躍を続けることになります。

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