保存パン

保存パンとは

保存パンは、缶詰やレトルトパックに密封されたパンで、数ヶ月から1年以上の長期保存が可能です。通常のパンが数日から1週間程度の消費期限であるのに対し、保存パンは常温で長期間保存できるため、非常食として重宝されています。

概要

保存パンは、長期保存を目的としたパンであり、一般のパンが数日から1週間程度しか消費期限がないのに対し、半年から1年以上に亘って常温環境で保存できるようにした保存食です。缶入りのパンでは、1年以上の保管に耐えるため、非常食などに利用されます。缶はプルトップ式が一般的で、内部には窒素などの不活性ガスが充填され、脱酸素剤などを使って劣化を防いでいます。

開発経緯

保存パンは、阪神・淡路大震災の経験から開発・製造が始まりました。製パンメーカーのパン・アキモトが先駆的存在であり、2004年の新潟県中越地震ごろから知名度が向上し、同様の製法で作られたパンが普及しました。製法としては、スチール缶に入れたカップケーキ状のパン生地を缶ごと加熱殺菌し、焼き上げた直後に脱酸素剤とともに封入・密閉することで雑菌の繁殖を抑えます。

特徴

保存パンは、保存を主眼とした製法ではなく、一般的な菓子パンに近い風味を持っています。これは、カロリーが高く、活動に必要なエネルギーを補給できること、緊急時のストレス軽減に甘い風味が効果的なこと、そして従来の乾パンなど無味乾燥な非常食との差別化を図るためです。フレーバーは、サツマイモ、チョコレート、コーヒーなどがあり、フルーツケーキ風のものやプレーン味、アズキやブルーベリーなどバリエーションも豊富です。ただし、塩気のある調理パンは腐食しやすいため、保存パンには不向きとされています。

また、バターなどの油脂成分を多めに使用することで、比較的しっとりとした風味とし、飲み物が少ない状況でも食べやすいように工夫されています。油脂成分を多くすることで、少量でも高いカロリーを摂取でき、パン4つで安静時に最低限必要なエネルギーである基礎代謝量を補える商品もあります。

保存パンは、単体では量が少なく、腹持ちも良くありませんが、調理不要、保存性、携帯性、食感などを総合的に考えると、バランスの取れた保存食と言えます。

購入場所と利用シーン

保存パンは、一般のスーパーマーケットなどで9月1日の防災の日に合わせて販売されることが多く、その時期に買い換える消費者もいます。企業では、災害時に帰宅困難者となった社員への対策として、保存パンを社内で備蓄するケースも見られます。また、長距離列車が運行される主要なJR駅でも備蓄されており、列車が大幅に遅延した際に乗客に配布されることがあります。

賞味期限が1年以上の缶入り保存パンは、購入から1年経過しても、開封すると焼きたての香りがし、美味しく食べられます。

被災時の食料としての役割

被災時には、初期段階で3日以上の水や食料の備蓄が推奨されています。しかし、被災直後は火を使った調理が難しい場合が多く、炊き出しなどの活動もすぐには開始できません。そのため、調理が必要なインスタント食品でさえ、被災初期の非常食としては不向きです。すぐに食べられる食品が必要となります。

サバイバルの観点から言えば、人間は水さえあれば3週間程度は飢餓状態でも生き延びることができますが、空腹状態は精神衛生上悪く、体力消耗による疾病などのリスクも高まります。

保存パンは、被災初期段階で求められる「すぐに食べられる食品」として、優れた保存性、食べる楽しみによるストレス軽減、限られた飲み物で食べられる点など、多くの利点があります。

ただし、パンを保護するために梱包が頑丈であるため、コンパクトさには欠けます。また、食べた後のゴミ（空き缶）が多く、他の非常食に比べてやや割高な傾向があります。しかし、賞味期限は現在では37ヶ月〜5年と改善され、他の保存食と遜色なくなっています。

保存パンは、災害への備えとして、非常に有効な食品と言えるでしょう。

関連項目

防災用品
乾パン - 堅パン
* 非常食

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