保義可汗

保義可汗（ほぎかがん）

保義可汗は、9世紀初頭に存在した回鶻（ウイグル）可汗国の第9代可汗です。在位期間は短く、その生涯は周辺国との関係、特に唐との外交・軍事関係に彩られています。

生涯

元和3年（808年）に先代の可汗が亡くなった後、唐の承認を得て可汗に即位しました。唐からは「保義可汗」という称号を与えられています。

即位後、保義可汗は国号を「迴紇（回鶻）」と改めたことを唐に報告し、両国間の関係は友好的に推移するように見えました。しかし、元和8年（813年）には唐への求婚が叶わなかったことから、3千の兵を率いて唐の国境を脅かすという事件も起こしています。これにより、両国間には緊張が走り、唐は使者を派遣して説得を試みましたが、保義可汗は求婚を諦めませんでした。

長慶元年（821年）に保義可汗が亡くなると、唐は弔問使を派遣し、新たな可汗を承認しました。

カラ・バルガスン碑文

保義可汗の名前が後世に知られるようになった大きな理由の一つに、「カラ・バルガスン碑文」の存在があります。この碑文は、回鶻の首都カラ・バルガスン（現在のモンゴル国）の南に建てられ、ウイグル語、ソグド語、漢語の3つの言語で記述されています。

碑文の内容は、回鶻可汗国の初代可汗から第7代可汗までの歴史、特にマニ教の導入と保護について詳しく記述されています。そのため、この碑文は回鶻可汗国の公式な歴史文献として、非常に重要な史料とされています。

現在、カラ・バルガスン碑文は、モンゴル国のカラ・バルガスン遺跡に保存されており、当時の回鶻可汗国の文化や歴史を伝える貴重な遺産となっています。

保義可汗の生涯は、唐との関係における友好的な側面と軍事的な緊張という二面性を示しています。また、カラ・バルガスン碑文は、回鶻可汗国の歴史や文化を理解する上で欠かせない資料であり、彼の時代を考察する上で重要な手がかりとなっています。

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