倉吉線

倉吉線：過去を繋ぐ鉄路の記憶

倉吉線は、かつて鳥取県倉吉市の倉吉駅から、東伯郡関金町（現在の倉吉市関金町）の山守駅までを結んでいた、日本国有鉄道（国鉄）の鉄道路線でした。この路線は、地域の足として、また人々の生活を支える重要な役割を果たしていました。

路線概要

倉吉線の総延長は20.0kmで、軌間は1,067mmでした。全線が単線であり、電化はされていませんでした。9つの駅があり、タブレット閉塞式という方法で列車の安全運行が確保されていました。また、全線にわたり30kgレールが使用されていました。

運行形態としては、全線を通して運行する列車のほか、打吹駅、西倉吉駅、関金駅を発着する区間列車が設定されていました。特筆すべきは、泰久寺駅と山守駅では客車列車の折り返しができなかったため、山守まで運転される列車はすべて気動車が使用され、客車列車は倉吉 - 関金間のみで運行されていた点です。開業から廃止まで、優等列車の設定はなく、すべての列車が普通列車でした。

速度と過疎化

1970年代には、沿線の過疎化が深刻化し、終着駅の山守駅周辺はほとんど何もない状態でした。しかし、乗降客は200人程度いました。これは、並行するバスの運賃が140円であったのに対し、国鉄の運賃が90円であったことが理由です。

また、1984年2月までは混合列車が運行されていました。1980年時点では、上下合わせて27本の列車のうち、表定速度が時速20km以下の列車が9本もあり、「日本一の鈍足列車運転線区」と評されました。特に、最も遅い普通列車は、西倉吉から倉吉までの6.8kmを27分もかけており、その表定速度は15.1km/hで、「マラソンランナーより遅い」と揶揄されていました。この遅延の理由は、線路等級が低く、30kgレールが使用されていたこと、そして、旅客列車、荷物列車、貨物列車を併結していたため、駅での積み下ろしや貨車の入れ替えに時間がかかったためです。

活躍した車両たち

倉吉線では、様々な種類の車両が活躍しました。蒸気機関車としてはC11形が、ディーゼル機関車としてはDE10形が使用されました。客車にはオハ35系やオハ61系が、気動車にはキハ58系、キハ65形、キハ40系、キハ23系、キハ20系などが使用されていました。

歴史

倉吉線の歴史は、1912年に「倉吉軽便線」として、山陰本線の上井駅（現在の倉吉駅）と倉吉町（現在の倉吉市）の市街地である打吹を結ぶ路線が開業したことから始まります。その後、1941年には関金温泉に近い関金駅まで、1958年には山守駅まで延伸されました。かつては、蒜山高原を経由して姫新線の中国勝山駅まで延伸する計画もありましたが、実現には至りませんでした。しかし、モータリゼーションの進展と並行するバス路線との競争に敗れ、1981年に国鉄再建法により第1次特定地方交通線に選定され、全線が廃止されることが決定しました。そして、1985年3月31日、「さようなら倉吉線」のヘッドマークを付けた列車が運行され、72年の歴史に幕を閉じました。

廃止後の代替と現状

廃止後、代替バスとして、日本交通、日ノ丸自動車、中鉄バス（現在は中鉄美作バス）の3社が運行を開始しました。しかし、2007年には中鉄美作バスの倉吉駅 - 蒜山高原間のバス路線が廃止されました。

現在、廃線跡は市道や県道、国道、サイクリングロードとして再利用されていますが、多くの場所ではレールやバラストがそのまま残されています。泰久寺駅にはホームが残されており、駅名標のレプリカが設置されています。西倉吉駅では、ホームの一部が再利用され、待合所とトイレが設置されています。また、山守トンネルはトレッキングツアーで利用されています。打吹駅跡地には、倉吉線鉄道記念館が建てられ、C11 75号機が保存展示されています。

倉吉線を舞台にした作品

松本清張の短編小説『百円硬貨』には、倉吉線が登場します。物語は山守駅で結末を迎えることになっています。

結論

倉吉線は、その歴史と風景から、「日本一美しい廃線跡」とも呼ばれており、年間1万人以上が訪れる観光地となっています。その軌跡は、今もなお、多くの人々の心に残り続けています。

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