個室ビデオ

個室ビデオ（こしつビデオ）

個室ビデオとは、利用者が店内の個室で映像ソフトを鑑賞することに特化したサービスを提供する店舗形態です。「ビデオボックス」「DVD試写室」「個室DVD」「DVDボックス」など、様々な呼称があります。

概要とサービス内容

店舗には、DVDやBlu-ray Discといった映像ソフトが多数用意されており、利用者は好みの作品を借りて、指定された個室で視聴します。かつてはビデオテープが主流でしたが、2000年代以降は光ディスクが中心となりました。取り扱い作品はアダルト向けが大半を占めますが、一般の映画やテレビドラマ、さらには雑誌や漫画などを置いている店舗も少なくありません。

主な利用者は男性ですが、一部には女性やカップルも入店可能で、カップル向けの部屋を設けている店舗も見られます。近年ではインターネットカフェのように、大量の漫画や雑誌を備え付けたり、インターネット接続、CS放送、オンラインの動画配信サービスなどが利用できる店舗も増加傾向にあります。また、2010年代からはVRヘッドマウントディスプレイを貸し出し、アダルトVRコンテンツを提供するところも現れています。

料金体系は基本的に時間制で、利用者は選択した映像ソフトやその他のコンテンツを持ち込み、個室で過ごします。個室は原則として一人用で、基本的な設備としては、映像ソフトの再生機器、ティッシュペーパー、ゴミ箱が備えられています。部屋のタイプは、床にマットが敷かれたフラットタイプか、リクライニングチェアやソファーが設置されたタイプが一般的です。大型チェーン店などでは、大型液晶テレビ、高性能な再生機器、CS放送、インターネット対応のパソコン、インターフォン、ウェットティッシュなどが整備されていることもあります。郊外に位置する店舗では、駐車場や駐輪場を併設している場合も見られます。

多くの店舗では、個室の外にシャワー室が設けられており、追加料金なしで利用できることが多いです。シャワー利用時のバスタオル貸出サービスを提供する店舗もあります（有料の場合あり）。その他、携帯電話の充電器貸出、フリードリンク、軽食提供、時間経過を知らせるコールサービスなど、店舗によって様々な付帯サービスがあります。また、共用スペースに電子レンジ、電気ポット、自動販売機、有料のランドリー設備などが設置されていることもあります。アメニティとして、全ての利用者にコンドームを無料で提供したり、特定のコースで使い捨て歯ブラシや髭剃りなどを提供する店舗も見受けられます。

法的な位置づけと規制

個室ビデオ店の営業は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」（通称：風営法）において、店舗型性風俗関連特殊営業の3号営業に該当すると定義されています（風営法第2条第5項）。このため、営業を行うには都道府県公安委員会への届け出が義務付けられています。また、店舗の設置場所についても、建築基準法に基づき他の性風俗業の店舗と同様に厳しい制限を受けます。このように、個室ビデオは法的には性風俗店とみなされており、インターネットカフェなどとは異なる法律や建築基準が適用され、比較的厳格な規制の対象となっています。一方で、法的には宿泊施設ではないため、旅館業法による規制は受けず、防火設備に関する一部の義務が比較的緩い側面もあります。

問題点

個室ビデオ店の中には、実態として簡易宿泊施設のように利用される店舗も存在します。しかし、多くは雑居ビルなどに小規模に展開しており、防火避難設備が十分に整えられていない場合があります。旅館業法の対象外であるため行政による規制が及ばない側面もあり、特に深夜の就寝時など、火災発生時の危険性が指摘されています。実際に、2008年10月1日未明には、大阪市中央区の個室ビデオ店「キャッツ」で放火事件が発生し、16名の利用客が犠牲となる痛ましい事故が起きました。この事故では、非常口から遠い個室にいた利用者や、狭い通路などにより逃げ遅れ、多くの方が一酸化炭素中毒で亡くなっています。

また、風俗店の一形態でありながら、一部には性的なサービスを従業員が提供する店舗も存在するとされます。しかし、性風俗店として適正な届け出を行っている店舗は少なく、警察による捜査や取り締まりの対象となることもあります。多くの個室ビデオ店が女性の入店を制限している背景には、こうした行為が行われているとみなされ、風俗店やラブホテルと同一視されることを避ける意図があるとも言われています。

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