早春の港

早春の港



「早春の港」（そうしゅんのみなと）は、日本のアイドル歌手、南沙織が1973年1月21日にリリースした通算6枚目のシングル曲です。発売元はCBS・ソニーでした。

この楽曲は、そのタイトルが示す通り、春の訪れを迎える港の情景を叙情的に歌い上げています。本曲の原型は、前年の1972年末（12月21日）に発売された南沙織のアルバム『早春のハーモニー』に収録されていた「ふるさとのように」です。シングルとして発表されるにあたり、「早春の港」と改題され、編曲と歌詞にも一部修正が加えられました。メロディーラインは概ね原曲と同じですが、歌詞の文字数に合わせて細部が調整されています。

作曲および編曲を手がけた筒美京平氏によるアレンジは秀逸で、楽曲全体に心地よい早春の雰囲気を醸し出すことに成功しています。特に、曲の冒頭や間奏に効果的に挿入される波の音のSEや、郷愁を誘うスティールギターの音色が、聴く者の心に温かな季節の到来を感じさせます。

本シングルの発売当時、絶大な人気を誇っていたフォークシンガー、よしだたくろう氏は、ラジオから偶然流れてきたこの「早春の港」に深い感銘を受けたと伝えられています。その感動から、南沙織さんの愛称である「シンシア」をタイトルにした、いわばアンサーソングとも言える楽曲を制作しました。この楽曲は、「よしだたくろう・かまやつひろし」名義で発表されています。また、「早春の港」は、南沙織さんことシンシアのファンであることを公言している歌手、岩崎宏美さんによってもカヴァーされており、彼女のカヴァーアルバム『Dear Friends II』（2003年11月26日発売）に収録されています。

1974年11月12日には、フジテレビの音楽番組『ミュージックフェア』において、「早春の港」そして「シンシア」を巡る興味深い共演が実現しました。かまやつひろし氏、よしだたくろう氏、そして南沙織さんの3人が共演し、中央に南沙織さんを据える形で、よしだ氏・かまやつ氏によって「シンシア」が歌われました。この時の映像は、その貴重さから近年の番組総集編などでも時折オンエアされることがあります。なお、この放送が南沙織さんにとって初めての『ミュージックフェア』出演となりました。

シングルのカップリング曲（B面）には、「魚たちはどこへ」が収められています。この曲は南沙織さん自身もお気に入りであることを公言しており、1978年10月に開催された彼女のさよならコンサートでも披露されるほど、思い入れの深いナンバーです。A面曲「早春の港」と同様に、この「魚たちはどこへ」も元はアルバム『早春のハーモニー』に収録されていた楽曲です。ただし、「早春の港」とは異なり、こちらは編曲上の大きな変更は加えられることなく、ほぼアルバムバージョンそのままの形でシングル盤に収録されました。歌詞は、春と共にそれぞれの道へ散って行った故郷の学友たちと、春の訪れとともに息吹く水中の魚たちの様子を対比させるような、情感あふれる内容となっています。

収録曲



両楽曲とも、作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平

  • - 早春の港（2:53）
  • - 魚たちはどこへ（2:24）

主な収録作品



このシングルA面・B面曲は、多数のLPおよびCDに収録されています。代表的なものを以下に挙げます。

早春の港


魚たちはどこへ


カバー



  • - 真心ブラザーズ: カヴァーアルバム『PACK TO THE FUTURE』（2015年10月7日発売）に収録。

関連項目




「早春の港」は、南沙織のキャリア初期における代表曲の一つとして、その叙情的なメロディと繊細なアレンジにより、日本のポップス史において重要な位置を占める楽曲と言えるでしょう。

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