僧祇戸

僧祇戸（そうぎこ）とは

僧祇戸は、中国の北魏時代に創設された制度で、当時の沙門統（僧侶を統括する役職）であった曇曜（どんよう）が始めました。

沿革

制度の始まりは、北魏が山東地方を制圧し、領土に組み入れた際に遡ります。北魏は、征服した民を「平斉戸（へいせいこ）」と呼び、都である大同の近郊に新設した「平斉郡」に強制的に移住させました。しかし、平斉郡における平斉戸の統治は、住民の反発が激しく、非常に困難な状況でした。

この状況を見た沙門統の曇曜は、自身の官曹である「昭玄曹（しょうげんそう、僧曹とも）」の管轄下に平斉戸を編入することを、自ら上奏して求めました。同時に、この制度を北魏のその他の州や郡にも拡大する許可を得ました。こうして、毎年粟60石を昭玄曹に納める民戸を「僧祇戸」と称し、徴収された粟を「僧祇粟（そうぎぞく）」と呼びました。

徴収された僧祇粟は、凶作の年に備えて貯蓄され、平時には貧しい人々に貸し付けられました。貸し付けには利息が付されたため、国家にとっては利益を得る手段にもなりました。僧祇戸は北魏の全土に広がり、豊作が続いたことから、僧祇粟に余剰が生じ、その余剰分は仏教関連の事業に充てられることが許可されました。

しかし、僧官や地方の豪族、官員らが結びつき、私腹を肥やすという弊害も広がり、貧しい人々が搾取される事態も発生し、その状況がたびたび訴えられるようになりました。また、同様に曇曜が創始した「仏図戸」とともに、北魏における仏教教団の隆盛を支える基盤となりました。

六鎮の乱以降、北魏王朝が瓦解すると、この制度も衰退していきました。ただし、辺境地域である敦煌のような地方では、唐代までその名残が存続していたことが、敦煌文献などによって確認されています。

参考文献

塚本善隆「北魏の僧祇戸・仏図戸」（『支那仏教史研究』、1942年）
塚本善隆「沙門統曇曜とその時代」（同上）

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