元始 (漢)

元始（げんし）

元始は、中国の前漢王朝において、平帝劉衎の治世（紀元1年 - 紀元5年）に使用された元号です。この時代は、後の新王朝を樹立する王莽が権力を掌握していく過程にあり、政治的な動きが活発でした。

歴史的背景

平帝の時代は、前漢王朝の衰退期にあたります。幼い平帝を補佐する形で、王莽が政治の実権を握り始めました。王莽は、巧みな政治手腕と策謀によって、徐々にその地位を固めていきます。

元始年間の出来事

元年（紀元1年）: 王莽が幼帝を補佐する太傅（たいふ）となり、安漢公（あんかんこう）に昇格しました。これにより、王莽の権力基盤は一層強化されました。
4年（紀元4年）: 王莽に宰衡（さいこう）という特別な称号が与えられました。これは、王莽が皇帝に次ぐ地位にあることを示すもので、その権勢を誇示するものでした。
5年（紀元5年）: 王莽は九錫（きゅうしゃく）を授けられました。九錫とは、臣下に対する最高の栄誉であり、王莽が簒奪に向けて着々と準備を進めていたことを示唆しています。同年12月には平帝が崩御し、宣帝の玄孫にあたる2歳の劉嬰（りゅうえい）が即位しました。
5年（紀元5年）: 漢書王莽伝には、「東夷王、大海を度りて国珍を奉ず」という記述があります。この東夷の国とは、大海を渡って来ることから「倭（わ）」、つまり当時の日本を指している可能性が高いとされています。
26年: 内モンゴル自治区で発見された居延漢簡の中には、「漢元始26年」と記された木簡が存在します。これは、新末後漢初の動乱期にも一時的にこの元号が使用されたことを示唆する貴重な資料です。王莽が簒奪後も一部地域で使用されたか、あるいはその後の混乱期に過去の元号が用いられた可能性があります。

西暦との対照表

元始	西暦
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元年	1年
2年	2年
3年	3年
4年	4年
5年	5年

まとめ

元始の時代は、前漢王朝が衰退し、王莽が台頭する転換期でした。王莽の簒奪に向けた動きや、倭との交流の可能性を示す記述など、興味深い出来事が数多く存在します。また、居延漢簡の発見は、当時の社会情勢や元号の使用状況を知る上で重要な手がかりとなっています。

参考文献

大庭脩・編『木簡　古代からのメッセージ』、大修館書店、1998年。

関連項目

他の王朝の元始（曖昧さ回避）
元号一覧 (中国)

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