元法僧

元法僧：北魏の皇族から南朝梁への亡命者

元法僧（げん ほうそう、興光元年（454年） - 大同3年閏9月2日（537年10月21日））は、北魏の皇族であり、その生涯は反乱と亡命に彩られています。彼は一時的に北魏の皇帝を自称しましたが、最終的には敗北し、南朝梁へと亡命しました。

生涯

元法僧は、元鍾葵の子として生まれました。彼の祖父は淮南王拓跋他、曾祖父は明元帝の弟である陽平王拓跋煕という高貴な血筋を引いています。元法僧は、太尉行参軍から通直郎へと昇進し、寧遠将軍、司徒掾、司馬掾といった役職を歴任しました。

延昌4年（515年）には、龍驤将軍の号を与えられ、益州刺史に任命されました。しかし、統治者としての才能に欠け、収奪と殺戮を繰り返したため、州内では反乱が頻発し、南朝梁の侵攻を招く事態となりました。

南朝梁の侵攻と洛陽への救援要請

熙平元年（516年）、梁の巴西梓潼二郡太守である張斉が侵攻してくると、元法僧は州城の城門を閉ざし、洛陽の朝廷に救援を求めました。孝明帝は傅豎眼を益州に派遣し、張斉を撃退させました。その後、元法僧は召還され、光禄大夫の位を受け、平東将軍・兗州刺史として出向しました。さらに、使持節・安東将軍・都督徐州諸軍事・徐州刺史に転じ、彭城に駐屯しました。

彭城での反乱と皇帝僭称

正光6年（525年）1月、元叉による圧迫を恐れた元法僧は、行台の高諒を殺害し、彭城で反乱を起こしました。彼は北魏の皇帝を自称し、「天啓」と改元。諸子を王に立て、将帥を任命しました。また、南朝梁に対して子の元景仲を派遣し、救援を求めました。

南朝梁の支援と彭城陥落

梁の武帝は元法僧を侍中・司空に任じ、始安郡公に封じました。朱异、元略、陳慶之、胡龍牙、成景儁らを派遣して迎えさせることとしました。元略は北魏の安楽王元鑑率いる討伐軍に彭城の南で敗北しましたが、元法僧は元鑑軍の隙を突いて勝利を収めました。しかし、豫章王蕭綜が彭城に派遣されると、元法僧は諸子や彭城の官民を引き連れて、梁の首都である建康に入城しました。

南朝梁での晩年

大通2年（528年）、武帝より中軍将軍の号を加えられ、中大通元年（529年）には車騎将軍に転じました。中大通4年（532年）には太尉となり、金紫光禄大夫を兼ねました。同年、武帝により東魏王に立てられましたが、北魏へ帰還することはありませんでした。その後、使持節・散騎常侍・驃騎大将軍・開府儀同三司・郢州刺史に任じられました。大同2年（536年）、侍中・太尉として建康に召還され、軍師将軍を兼ねました。

大同3年閏9月甲子（537年10月21日）、83歳で死去しました。

子女

元景隆
元景仲

元法僧の生涯は、北魏の皇族でありながら反乱を起こし、南朝梁に亡命するという、激動の時代を象徴するものでした。彼の行動は、当時の政治情勢や人々の思惑が複雑に絡み合っていたことを物語っています。

もう一度検索